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「どうしてこういう事になってるんでしょうか…振り返りたくない…」

場所を移ってバルセロナの街が一望できる公園に来ていたのだが、その後ろには重い空気を背負ったままの鏡夜とカルメンさん。そしてそこから少し離れた所で不機嫌そうにしているのは竜胆だった。

「いい公園ですね。鮮やかなタイルと見事な曲線で表現された石柱やベンチ達。綿密な設計の上に成り立っていながら感じさせるのはどこまでも自然との調和だ」

「でしょう?私もここは大好きな場所なの。隣にいるのが不快な人間でなければもっと美しいはずなんだけど…」

あぁ、空気が重い。お互いネチネチと嫌味と応酬。

「「ちょっと殿!なんとかしてよ!なんでこのメンツで市内観光なんて流れになってんのさ!」」

「よし!逃げよう!」

鏡夜と奈々子が喋っている内に気付かれぬようコソコソと逃げようとする面々。が、いつの間にか鏡夜の手が伸び環を引き摺った。

「イヤだああああ!」

「との〜〜〜!」

「仲がいいのね、おホモ達?」

その言葉を聞いて鏡夜が指の関節をパキリと鳴らす。それに恐怖した環は付き合う事を了承してしまったのだ。当然男子部員達は怒りを隠せない。

「竜胆先輩?やっぱり…」

「ハルヒちゃん」

竜胆は伏せていた顔を上げるとハルヒとその横には奈々子の姿。

「あら、トイレではどーも」

「いくつ?」

「16歳です」

「私は18歳です」

「へぇ。お菓子食べる?アーモンドを砂糖で炒ったお菓子よ」

なんともざっくりした人だと思った。奈々子はそのままお菓子を容器ごとハルヒに渡して崇の背の高さに驚いていた。

「竜胆先輩っ。お菓子ですよ。食べますよね…?」

「んーん☆いらない☆」

そう笑顔で言う竜胆はやはり不自然だと思った。

「てゆーか!ああもうなんだってこんな開放的な空の下で異常に閉塞的な気持ちにならないといけないのさ!」

「楽しくあちこち回りたいのにィ〜!カサ・バトリョにカサ・ミラ〜!カタルーニャ音楽堂〜!」

「あら、詳しいのね。好きなの?モデルニスモ」

「好きっていうか大好きなのっ!ていうかスペインの建築物はどれも大好物なの〜!」

「ロンダの街にタラゴナの遺跡にコルドバのメスキータにトレドの遺跡に…」

「へえ…じゃあグラナダのアルハンブラ宮殿なんていったらもう…」

――死ねるレベルでスキ…!

――分かる…!

すっかり意気投合してるじゃない。楽しそうで結構な事だわと竜胆はぼんやりとそれを見ていた。


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