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環がデートへ誘う現場を遠くから見ているホスト部面々。だって徹夜をしてまで協力してあげたのだからそれくらいは許されるはず。自分勝手な正論。そして驚くのはハルヒから遊園地のチケットを渡したと言う事くらいだ。
「遊園地でもうまいもの市でもこうして池の中でも、どこでも環先輩と一緒なら少なくとも退屈だけはしない確信がありますから」
チケットが池に落ち、それを追った二人も池に落ちたが二人は良い雰囲気のまま。
「環先輩、こう見えても自分実はこうして二人きりになれるのちょっと楽しみにしてたんですよ?」
そんなハルヒの笑顔は見た事も無いくらい綺麗だった。それはやっぱり恋をする女の子の目なのだ。男装しても隠しきれない女の子の部分。まぁ、そんな二人を観察する為にその時の変装をばっちり考えている面々。
「はぁ?知らないわよ。私も忙しいの。そろそろ自立なさいな」
竜胆は環の電話をぶちりと切った。そうして自分は服選びに取りかかる。そりゃ初デートの時の服や化粧ってとても大事よねぇ。ハルヒちゃんより乙女だわ、環の方が。私だったらこの時期にワンピースはかかせないわ。少しヒールのあるサンダルで初日で足が痛い、なんて事が起こらない様にしないと。相手に迷惑がかかってしまうから、背伸びもほどほどに。と、言っても私はハイヒールに慣れているのだけれど、背が高くなり過ぎてしまって嫌なのよね…普段回りに居る人達は大抵背が高いから良いの…竜胆は思わず鏡の前で合わせていた服を投げ捨てた。
「何がワンピースぅ!?」
「お嬢様!?どうかなさいましたか!?」
だめなのよ、そもそもこういう思考がだめなのよ!
「…今日は女物じゃなくて男物にするわ。動きやすいものを持ってきてもらえますか…」
本日、環&ハルヒの初デートでギクシャクするに違いない二人をニヤニヤとウォッチして後でからかい倒す為、ホスト部デバガメ部隊が出動します。遊園地入り口。待ち合わせ時刻の前でソワソワしているハルヒはとても可愛らしい女の子だった。
――かわいいじゃんか…!そこに環の姿はまだ無い。
「うらやましいっつーかムカついてきたな、殿のヤツ…。大体なにハルヒの事待たせてんだよ。徹夜してでも先に来いっての」
「どうせ服が決まらないとかで大騒ぎしてるんだろう」
「してるよ。だって朝電話来たし。流したけど」
「てめーの服装なんて誰も興味ねーっつの」
「この際とんでもなくアホなカッコしてきて速攻フラれりゃいーのに」
「さすがのタマちゃんもそれほどまでにおバカさんじゃ…」
光邦の声を遮って環の声が聞こえてきた。皆は振り返って呆然とした。そこには紋付袴で現れた環の姿。
――それほどまでのバカだ!何だかんだ言って協力してしまう彼等は即環を拉致り、普通の服に着替えさせて野に放った。
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