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扉を開けるとそこはギリシャ神話の世界でした。

「いらっしゃいませ」

「環様おかえりなさい…!環様ご不在の間私達はまるで太陽を失ったような気持ちでしたわ…!」

「ああ…姫達悲しませてごめんよ…!しかしご存知ですか?太陽神アポロンとて暁のカーテンを開けてくれる女神の存在なしには輝く二輪馬車で天駆ける事はできないのですよ。僕を暗闇から導き出してくれた君達こそが真の太陽!君達こそが僕の暁の女神…!」

ホスト部キング大復活祭。絶好調だ。こうして皆が待ち望んだホスト部に日常が戻ってきました。

「そうねぇ、ハルヒちゃんが美少年のアドニスかヒュアキントスか〜どちらも花になった美少年の話ね。アネモネとヒヤシンス。そもそも花になる、という考えはとても奥深いわね。そう言えばギリシャ神話と関係無いのだけれど、ひまわりも昔は女の子だったそうよ」

どうして神話等は花になったりするのだろう。人を花に例えるのだろう。確かに種は残り永遠に近いのだろうけれど。そう考えると少し不思議だ。

「太陽に恋をした女の子はいつも自分を見てくれない太陽を追って空を見上げていた。そして見てもらえない事を知って彼女は涙を零す。それがひまわりの種の形。零れた涙は来年また咲く。今度こそ見てもらえる様にってね」

私もいつか空を見上げて涙を零す時が来るだろうか。その涙は次へと繋げる事が出来るのだろうか。いやいや、涙を流すのはまだ早いだろうと竜胆は心の中で呟いた。今をどうするのか、よ。竜胆は小さく溜め息を吐いたが自分よりもどうも興味のある方へ向かってしまう。

「「「ちょっとちょっとそこのカーノジョ☆」」」

その彼女とはハルヒの事だった。先日の空港ではようやくお互いの気持ちを伝えて、彼氏彼女になったと言うのに雰囲気は全く変わっていないのだ。

「いーわけ?おたくの彼氏復活して早々女子達に歯の浮くような事言いまくってますけど〜〜?」

「か…彼氏って…」

「もうっ!彼氏って単語に照れるなんてピュアネ☆」

「嫉妬とかしちゃわないワケ〜〜?」

悪魔三兄弟の言葉を聞いてハルヒは環に視線を移した。環は相変わらず女子に囲まれたまま。祖母や第二邸に居た使用人達との話を楽しそうにしていた。何でも夢のセッションが出来たらしい。

「…嫉妬とか以前にむしろああいうトークに全力でうっとりできるお客さん達に尊敬の念すらおぼえるよ…」

「「「ああ…」」」

三人の期待を他所にハルヒはすっかり冷めていた。好きな事は認めるけれどちやほやしたりは出来ない。

「「デッデートは!?毎日一緒に帰ったり二人っきりで会う約束は!?」」

「全然」

「全然!?な、何で!?普通はこれからが楽しいんじゃないの!?ラブは何処!?」

「環先輩なんか忙しいみたいですし」

告白した事で任務を完了した気分になったらしい。ハルヒはすっかり落ち着いていた。むしろ気持ちを伝えすっきりして清々しいのだろう。


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