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鏡夜が光馨、ハルヒを呼び出し、何を言うのかと思えばそれは衝撃的な出来事だった。

「「殿のママが日本に来てる…!?」」

「ああ…3日前からロワグランホテルに滞在中らしい」

「「やったじゃん!お母さんと会えれば殿も元気に…!」」

「いや…どうもそう簡単にはいかないようだ」

相変わらず環も頑固だそうだ。そして放課後に須王本邸に彼等が行っても環が顔を出す事はなかった。そうして既に環が学校へと来なくなってから既に10日が経過していた。

「環に会いたい…。と、言うかさ、環がいなきゃケンカしてる設定も意味なくない?」

「無意味だな」

竜胆は環の席をぼんやりと見ていた。こうやって鏡夜を話せる事は嬉しいが、やはりそこに環がいないのは悲しい事。むしろ環がいなければならない。そんな時竜胆と鏡夜に城之内が近付いてきていうのだ。

「…城之内さん…?今何て…」

「ですから、須王さんの出生に問題があり、会長に認められていない事は皆とうに知っていると申し上げているんです。少なくとも指名客の大半は早い段階で知ったはずです」

どんな情報でも知りたいと思うのがファン心理。知った時は動揺したけれど、誰も気にしてはいなかった。だって、あなた達がそうでしょう?

「ですから、その上で私達も何かお役に立てないかと」

気がつけばこちらの様子を心配そうに見ている人達。そこは常連客だけじゃない。クラスメイト達もそうだった。そしてクラスだけじゃない。大学部の先輩たちだってそうだ。

「おーオオトリー柊ー須王大丈夫かよー」

「先輩方…大学はいいんですか」

「うるせーオラ、須王に気合い届けろ〜!」

バシバシと叩くな!竜胆はその衝撃で前につんのめった。

「柊もいつまでも須王とケンカしてんなよーとっとと謝っちまえ!」

竜胆は倒れたその場に座り込んで先輩達を見上げて思う。環。あなたって本当にすごいわよ。――たくさんの出会いとつみ重ねた時間の中であなたはこんなにも人の心を動かしてきたんですね。

「あははは!だったら先輩達もアホを出すのに協力して下さいよっ!って事で携帯の番号教えてくれます?何かあったら相談するんでー」

貴方を心配してくれる人はこんなにもいるのよ。それってすごい事なのよ?分かってる?憧れちゃうわよ。もう貴方が羨ましい。こんなに沢山の人を動かして、こんなに沢山の人達に心配されて。それって私じゃ出来なかった事、環だから出来た事なのよね。この状況をどう打破するか考えていれば、理事長に呼ばれたハルヒが教室に駆け込んできた。

「鏡夜先輩!竜胆先輩!光馨!」

「そんなに走ってどうしたの?」

「理事長に呼ばれたって〜?お話なんだったの〜?」

何か書類を…と一瞬通常に戻ったハルヒは思い出した様に焦り始めた。

「大変です!環先輩のお母さん、明日の正午の便でフランスに帰っちゃうそうです…!」

「なんでだよ、だってまだ殿に会ってな…」

「元々短期の滞在予定でなんとかお医者さんの許可とってきてもらったんだって。まだ治療も残ってるし、長い間外国にいられるだけの体力は…」

――理事長…誰もが呆れ返った。どれだけ人に迷惑をかければ気が済むんだろうか。ちなみに今回の被害者はアンヌさんだろう。


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