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「…やっぱりそう来たか」
次の日の朝鏡夜に会った竜胆は聞かされた事に驚くよりも先に納得してしまった。光と馨の方が大きな声をあげたが。
「「無期限活動停止…?」」
「ああ、さっき校長室に呼ばれて言い渡された」
ホスト部の活動停止宣言。表向きの理由としては昨日彼等が須王の本社に乗り込んだから。
「…何やってんだよ」
光は呟いた。それはとても小さい声だった。
「殿は何やってんだよ…!」
「光…」
「何か事情があるんだってのはわかるよ。どうしても話せないくらい深刻なんだって事も。けど廃部同然にまでされて何で黙ってるんだよ、ハルヒにだってあんな――…」
「…馨、ハルヒは?」
「今日は休むってメールきた。…仕方ないと思うよ。殿にあんな事言われたら誰だって…」
「昨日、蘭花さんの所に高坂弁護士が会長の使いとしてハルヒの留学を勧めに来たそうだ。会長がハルヒを排除したがっているのは間違いない。理事長の考えも読めないままだ。想像以上に身動きのとれない中で環は環なりに戦おうとしているんだろう。その方法が正しいのか俺にはわからないが――…」
竜胆はその事について考えていた。今自分に出来る事とは何だろうか。今の私に出来る事って一体何?そんな思いのまま次の日登校するとハルヒの格好が恐ろしく変わっていた。出会った時の様にもさい格好だ。
「ハルヒ!頼むから落ち着けって!ヤケになんなよ、あのなあ殿はおまえの…!」
「光、違うよ、ヤケになってるんじゃなくて、聞いて!自分は――…」
「ハルヒ?」
ハルヒが何か言いかけた時、ちょうどよくそこには環と鏡夜、その後ろには竜胆が通りかかった。
「…その格好…」
そしてハルヒは環に近付き言うのだ。自分の決心を。
「…お祖母さんにわかってもらう為なんですよね?お祖母さんに部活動を禁止されて、その意思を無視してまで好き勝手できる環先輩じゃないですもんね。だから、これは理解してもらうために必要な時間なんでしょう?」
ハルヒはそう考えた。その言葉が環に響く。理解して欲しいのだと。時に傷つけてしまったとしても、相手が大切であればあるほど、守りたい。共に生きる事をあきらめたくないのだと。その思いが人を強くさせると信じてはいけないだろうか。
「…部活の事だけじゃないですよね。お祖母さんは大切な家族だから――…」
待ってて欲しいとは言えない。いつになるかもわからない。だけど、決してあきらめもしないから。
「…その為には今は自分が近くにいてはいけない理由があるんですよね。それなら自分は環先輩と出会う前の藤岡ハルヒに戻ります。だから安心して先輩のしたい事をして下さいね」
ハルヒの言葉に環は涙ぐんだ。それはハルヒだけの言葉じゃない。皆の言葉のように、
「…ありがとう」
誰も諦めてはいない。誰もが同じ思いを胸に秘めたまま、そうしてホスト部は解散した。いいじゃない。待ってる?誰に物を言っているの?何もしないで待っているのは性に合わない。
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