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春の気配も近付く2月下旬の桜蘭学院。

「はーいちゅうも――く!そろそろ僕ら卒業するよ〜〜っ」

重大発表を淡々と言ってのける光邦。そして本日のホスト部はついに3年生卒業直前のラスト営業日なのでありました。辺りは卒業してしまう光邦と崇へ向けた悲しみであちらこちらから涙。

「牡丹君も3年生になりますけど、進路とかはお考えですの?」

「うん、考えてるよ」

「そ、それは桜蘭の大学部に進みますのよね…?」

あ、と竜胆は小さく呟いた。親との約束は高校生活を男装して過ごす事。それが終わればもう自由に好きな事をしてもいい。光邦と崇はきっと卒業してもホスト部は続けるだろう。それと同じ様に大学部に行っても続ける…いや、その時には環も高校を卒業するのだから、ホスト部がどうなるか分からない。そもそも自分には新しい夢が出来た。ならば、ホスト部に顔を出す時間等無くないか…?牡丹はあちらで役者として学んで行くだろう。

「…どうだろう、夢があるからさ、簡単には決められないよ」

それとも役者になりたいとここで言っておくべきなのか――…竜胆は自分の言葉を後悔した。目の前では牡丹君までぇ〜!と涙を流すお嬢様方がいるからだ。

「ハルヒは泣かなくていいのか?トラックで運ばせたからタオルの予備なら充分だぞ?」

「いや…泣くとか以前にまるでピンとこないんですけど…第一卒業というならまず付属の大学部とはいえ内部入試や進学の準備で相当忙しかったはずでしょう?…自分の勘違いでなければひたすら遊んでいたようにしか見えないのですが…」

「それがハニー先輩とモリ先輩のすごい所。努力している所は決して見せない。ハルヒちゃん、タオル頂戴ね」

竜胆はハルヒの手からタオルを奪い取った。当然それは自分用ではない。そこに崇に近付く女性。

「学部が別れてあまりお会いできなくなりますけど…どうか…お元気で」

その子はバレンタインの時に崇に告白した女性だった。

「…ああ…」

「そういや大半の人が大学部に進むっつっても学部が違えばそうそう顔も合わせなくなるわけか」

桜蘭の大学部は何分学部が多い。校舎もまた違ってくるだろう。それよりも崇の様子が気になってしまう。彼は珍しく些細なミスを重ねて、たった今持っていたお茶を零した所だった。


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