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「ハーッピバースデートゥーミー」
放課後の第三音楽室からは誕生日ソングが聞こえた。そのアホらしい歌詞と無駄なまでの歌唱力に誰もつっこんだりはしない。
「ハァッピブァースデェーイ。ニューたーまき〜ハーッピバースデーキーング〜!うむ!予行練習はこれくらいでいいかな。ケーキよーし!飲み物よーし!喉の調子よーし!今日も美声だ☆」
環の手にバースデーケーキとテーブルの上には飲み物まで準備されている。
「わーい!ケーキ!ケーキ!」
「ケーキは食べたいわ!」
歌とかそういうのは無視して特製ケーキなら食べたいと竜胆と光邦は目を輝かせた。
「ねぇ…ホントに僕らも出席しなきゃダメなの?この茶番劇…」
「ニュー環とやらはどうでもいいが、ミーティングで来月のイベントを決める必要があるからな」
「ニュー環ねえ…そりゃ僕も殿に前みたく元気になってほしいって思ったけどさあ…だけどまさか…あの人にまだ“上”があったなんて…」
そう、環のバカさ具合は増していたのだ。皆溜め息を吐いた。嬉しい半分、うざい半分という所だろう。
「あっそうだ!席札を作らねば!パーティーでの席順は大切だからな!」
「ところでハルヒはどうした?」
「図書館ー」
ハルヒは夢に向かって色んな本を読み漁っているらしい。それは今に始まった事ではないが、最近回数が増えた事は確かだった。
「えーと、ここがモリ先輩。こっちがハニー先輩で…俺の隣がハルヒっと…」
環が準備していく席札には“須王ハルヒ”の文字が。
――本気すぎてツッコミづらい!何かもう恋する乙女の隠すであろう行き過ぎた行動を目の当たりにして竜胆でさえも馨と同じ様にひいていた。
「案外しっくりくるねぇ。“須王ハルヒ”!」
いやいや、ハニー先輩。ケーキ食べたさだけにそこに乗っかってはいけません。環が乗ってしまうから。竜胆は心の中で呟いた。
「えへへ。ちょっと気が早いかもと思ったんですが、こういうのは互いの気持ちが大切で…」
「“須王ハルヒ”。総画は22か…家庭運凶。特に財を持つと破滅の恐れアリだって」
静かにしていた光はボソリと呟いた。その手には携帯。
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