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「きゃああああ!流石常陸院様、桜蘭のエース!今決めたのは光君?馨君?」
女の子の声が体育館中に響き渡った。
「どっちでも良いわ、どっちも素敵!」
その言葉は二人に突き刺さる事に誰も気付いていない。気付くのはいつもお互いだけ。光じゃない方の馨と、馨じゃない方の光だけ。
「馨君、タオルを…」
「…僕は光だけど」
「ごっごめんなさ…」
「別にいい、慣れているから」
その顔に影。何度も出すヒントに気付かない彼女達は知らずに彼らを傷つけていく。そして聞こえた笛はタイムの証、負傷者が出た事を告げた。
「馨!」
光は迷わず駆け出していた。倒れているのが自分の相方だと気付いていたかのように迷いはなかった。
「担架を!すぐに医務室へ!」
「馨…っ」
「光君、君は駄目だ。試合に戻れ!光君、早く…」
「だまれ…っ!」
「光…落ち着くんだ、僕の痛みを感じとっちゃいけない。いいな?怪我してるのはおまえじゃな…」
二人は繋がっている。繋がっているからこそ分かる痛み、悲しみははけ口を知らずに積もっていく。
「馨…無理だ…痛い…痛いよ、馨――…」
場面変わっていつの間にか外。
「…君達が羨ましいな…」
雨に濡れる孤独な王子。は双子を見て切なげに微笑む。
「須王先輩…」
「でも、須王先輩は学院のアイドルで…」
「アイドルか…そんなうわべだけの称号でもてはやされるくらいなら、きっと一人の方がマシだ――…」
傷ついた心と心が交差する。
「何なの…!…いいのよ、俺は私。……俺はさ姉さんの代わりに生きなきゃ。俺の周りには誰もいらない。だからっ…俺と姉さんの間に入ってくるな…!…じゃないと、姉さんが寂しがる、わ…」
叫びたい程の想いを皆抱えている。
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