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12月も中旬を過ぎた桜蘭学院。南校舎の最上階、北側廊下のつきあたり。

「ちょっと…僕コレかぶんの?顔見えなくなっちゃうんだけど」

「うわっ、ホントにコレ視界狭いよ光」

「わぁ!?ちょっと、馨!裾踏んでるってば!」

「これおヒゲ〜?どうやってつけるの〜?」

「ハニー先輩、自分がお手伝いします。モリ先輩はこのハチマキを…」

「…わかった」

「環!すみっこで何してる、皆も急げ。もう客様がいらっしゃる時刻に…」

扉を開けると日本昔話のコスプレ準備中でした。

「「わー!まだ着替え中〜!」」

ようやく準備を終えたホスト部員達をいつものお客様方は少し地味だと思いながら見ていた。

「牡丹の君はかぐや姫ですのね?」

「そうよ☆私にピッタリらしいわ」

耳の側で綺麗に揃え切られている髪と長くて真っ直ぐな黒髪。そして姫の様に十二単は重すぎて動けるはずがない。いくら着物は着た事があるにしても十二単は初めてで重くて暑くて苦笑いの一つでもしたくらいだ。モリの桃太郎、鏡夜のうらしま太郎、そして光が猿、馨がキジ、ハルヒが犬。光邦は花さかじいさん、そして環はうらしま太郎が助けたカメらしい。その姿とても面白いものだった。

「鏡夜!どういう事だ、今日のテーマはロシアの民族衣装の予定だったろう!いつ変わった?何故変わった?大体なんで俺がカメなのだ!フツー俺が桃太郎だろう」

「カメなんて難役こなせるとはたいしたものだ。よほどの美形でもない限り只の笑いものだぞ?」

「笑われてるだろう、実際!」

「うっるさいなー!殿はまだ顔が判別できるだけマシじゃんか!僕なんかサルだよ、サル!」

怒れる光を他所に竜胆は重い十二単をずるずると引き摺ってゆっくりソファに座ってふぅと溜め息を吐いた。

「そこのサルさん。ほら、かぐや姫が貢物をご所望よ。ほら早く。飲み物プリーズ」

「うっさいよ!人の形だからって調子に乗んないでヨ!だいたいかぐや姫は飲み物なんか望んでないから!」

「まあ落ち着け。実は先日意外な筋から企画の申し出があってね、その熱意をかって試しに採用してみたんだよ。たまには物珍しくて面白いだろう?」

利点があるとすればコストの低さ。確かに本格的な民族衣装を取り寄せるよりも着ぐるみの方が断然安い。こんなださい企画を考えたのは誰かと声を張ればハルヒはおずおずと手を挙げた。何でもたまには積極的に部に参加しようと思ったらしい。


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