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2年生の研修旅行が終わって間もない桜蘭学院でした。南校舎最上階、北側廊下のつきあたり扉を開けるとそこはトルコでした。久しぶりのホスト部活動にお嬢様方は大変喜び、そして心配するのは環の腹の具合でした。生憎環は研修旅行中ずっと腹を壊していたという設定なのです。だが、久しぶりの活動にも理由がありました。環は須王の事業の一つでもあるサービス分野に志す事を決め、ホスト部の経営に今まで以上に力を入れ始めたから。

「古代の人々は“幸せは空から降りてくる”と信じ、この青い石に願いを託したものだそうですよ」

環のそんな話を聞いて竜胆は考えた。空から幸せが降りてくる?なら、私が無意識に空を見上げるのはいつも幸せを探していたのだろうか。

「トルコ石の宝石言葉はね、沈着冷静・先見の明・開放・社交性・冒険心・自由・穏やかな心。水色の宝石で社交性を高めたり、心を開く助けとなったり、ポジティブな心の持ち方をサポートしてくれると考えられているの」

いつか私が貰った空色の宝石。開放、心の開く助けに――…。

「トルコ石の結晶構造は、不信、罪悪感、すぐ謝ってしまうなどのマイナス感情をとり除き、感情的安定を促す波動を生むといわれていて、そのため人間関係の無用なトラブルを回避し、幸福や安全を呼び込むパワーがあるとされる宝石なのよ」

だから尚更お守りとして使われていたりするのね。と、言う事で…その間に鏡夜の手にはトルコ石を使ったピアス。

「まあ可愛らしい☆頂いてよろしいんですの?」

「ええ。“ナザールボンジュウ”牡丹が言った通りトルコの代表的なお守りです。皆様が元気で日々ホスト部にいらして下さる事が我々の幸せでもありますから」

「選んだのは私なのよー!是非使って頂戴ね。私とお揃い☆」

竜胆は耳元を出してピアスを見せた。各自得意分野を生かした接客はお客様方の目を輝かす。それを見て喜びを覚えるのは自分だ。自分の好きな物を好きだと喜んでもらえる事がとても嬉しい。

「鏡夜。後で帳簿とお客様リストを見せてくれるか?それから食器の仕入れの件でちょっと相談したいんだが」

「…それは構わないが今日は6時にロワグラン・ホテルに行くと言ってなかったか?ミーティングを見学させてもらうんだろう」

部と平行して週に数日は父の仕事の見学。空いた時間はサービス関係の本を読みあさっている。環は自分の夢を見つけ、つき進んでいくのだ。そんな環を他所にハルヒはぼんやりしている様。竜胆としてはそちらが気になってしまう。

「ハルヒちゃん、大丈夫?」

「お医者様はなんて?」

「ハァ…病院では何とも無いって言われてるんですけど…どうも食欲がなくて」

そんな時環が現れる。そうするとハルヒは過剰に反応した。竜胆はそれをチャイを飲みながら横目で見ていた。


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