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「あ゛あ゛あ゛ぁ――…ねむぅぅ」

「…仮にもご令嬢のお前がそんな口を開くな」

「仮違う。れっきとしたご令嬢」

竜胆はあくびをかみ殺した。フランスカンヌにて自由行動の一日目だった。とりあえずコートダジュールにある保養地と別荘を虱潰しに探して行くしかない。例え調書に名前が無くとも偽名の可能性がある。それに興信所を使えばいつ須王にバレてしまうか分からない。だからこそ自分達の足で探す必要があるのだ。

「竜胆。お前昨晩は寝たのか?」

「…三時間くらいね。鳳家では知りえないであろう情報探すのに手一杯」

「どういう意味だ」

「悪いけれど柊家は鳳家と違って敵はそう多くはないわ。争いごとは嫌いだからね。仕事の繋がりだけではなく心の繋がり。だからこそ得られる情報もあるという事よ」

鏡夜はこれを旅行中の暇潰しだと言うが、そんな事はないと信じている。

「で?その心の繋がりとやらで得られた情報とは?」

「ないわ!あったら今頃ぐっすり眠ってお肌のコンディションは抜群だよ!ほら、見てよ…恐ろしい事に私の目の下には隈さんが常駐してるわ…」

そう簡単に物事進むとは思っていない。これはある意味賭けでもあるのだ。理由も無しに学校行事だからとフランスに飛べて、誰にも怪しまれずに自由に調べられるこの時間。何も環と母親を会わせようとしているわけではない。ただ、それが環の為になれば、その一心で鏡夜と竜胆は動く。

「鏡夜。顔が悪い。橘さん達困ってるから」

「顔が悪いとは失礼な。竜胆こそ自慢の柔肌に疲れが出てる様だが?」

「メイクよ、メイク。最近は少し疲れた女性に魅力が感じられるっていうね」

「聞いた事ないな」

「今作ったわ」

イライラを隠せないまま竜胆達は空港に着いていた。コートダジュールで環の母は見つからなかったのだ。一日中動き回り、食事と言っても軽食を車の中でとる。そして愛想を振り撒きながら環の母親の事を探る。

「…まあいい。どうせ本命はパリだったしな」

「パリね…。でも、その前にクラス別行動がある事を忘れないでよ」

竜胆達がフランスに着いて6日目の事。フランスパリ郊外にてクラス別行動日。

「この美しい田舎の風景に魅せられた画家達の気持ちもわかりますわねえ☆」

「本当に☆ミレーにルソー、コロー…あとは…」

「ディアズ、ドービニー、デュプレ、トロワイヨン。後の印象派の基盤となったバルビゾン派の7星ですね」

鏡夜は得意げにお嬢様達に話しかける。博学自慢の様に聞こえるが、それは彼にとっては…

「都会に疲れた画家達にこの土地は癒しを与え自然から学ぶ事を教えたそうですよ。そう考えると我々ホスト部も癒しだけではなく皆様にとって何か実りあるものも御提供できる部でありたいものですね…?」

部の営業でもありました。にっこりと微笑む鏡夜にときめきを隠せない女性達。


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