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竜胆はぼんやりと今年の研修旅行について説明を行うホームルームを聞いていた。研修旅行と言う名の旅行だと言う事は知っている。だが、今更海外に旅行と聞いても期待はない。むしろ不安ばかり。10日間も他人と暮らしていかなければならない。共同生活の様なもの。男装している竜胆にとってそれは厄介極まりないものだった。そしてその研修先を聞いて更に驚いたのでありました。すっかり季節は秋。体育祭も終わり間もない桜蘭学院、南校舎最上階北側廊下のつきあたり。扉を開けるとそこはスコットランドでした。

「まあ素敵!バクパイプ隊ですのね☆タータンチェックのスカートが皆様とてもお似合いですわー☆」

皆が身に纏う暖かそうなタータンチェックとはまるで正反対の格好をしたまま膝を抱える一人の姿。

「あら?環様は?接客して下さらないの?」

「「今日の殿には期待しちゃダメだって!カッコつければつけるほど絶対笑えるから!」」

「どんなに気取ってもどーせ“俺と一緒に恋の土俵に上がりませんか”とかー」

「“どんな名行司でも僕らの間を軍配でさばく事はできない!”くらいしか言えないもんネ――ッ!」

「あはは、それはいい!」

超笑えるー!むしろ聞きたい!そんな悪魔三兄弟の声が部室に響き渡った。

「…おまえら人の不幸がそんなに面白いのか…それにこれは廻しじゃない!越中褌だ!」

流石の環も褌姿は恥ずかしいのだろう。皆とのギャップがその羞恥心を煽り顔を赤らめたままだ。

「鏡夜!おまえか今日のコスプレの提案者は!俺が褌なのに自分達だけあったかそうで派手な格好しちゃって!なんのあてつけだ!」

「おや?うちのキングは体に自信がないのかな?」

「…リレーで鏡ちゃんに負けたらフンドシ一丁…」

「「男と男の約束も守れないってなんかネ――…」」

「男の沽券に関わるわ――…」

コソコソと陰口を言うように集まれば環は苛立ちを隠せない。

「環先輩…あのう。…これスーパーでオマケに貰ったんですけど、あげますからちょっと静かにしてて下さいね」

環は拗ねた様に部屋の隅でハルヒから貰ったスーパーボールで遊び始めた。しかも何かすごく楽しそうに無邪気に遊んでいる。

「よし!いつもと同じくらいバカっぽい!」

「とりあえず僕らの動揺も見ぬかれてないみたいネ」

環を一人にし、陰でメンバーは集まる。彼らの動揺には理由があった。

「まさか2年生の研修旅行がフランスになるとはねぇ…」

「発表された時の殿のリアクションは?」

「一応普通だったな」

「普通過ぎて逆に不自然」

今年の二年の研修旅行はフランスに決まってしまったのだ。環にとってはとてもゆかりのある地。


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