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「あのさ、鏡夜先輩の事じゃなくて僕としては竜胆ねぇの事も気になるんだよね」

「竜胆?」

「そう。どうして竜胆ねぇの事誘ったのかなぁとちょっと思って」

そうだな。話しても良いかもしれない。それはまだ俺がホスト部を作ると決めてからの事。


須王環の中学生日記@


それはまだ俺が中等部三年の時の話。やっと本気を見る事が出来た鏡夜とは親友になれた。(と思っている)そして気になったのは次。鏡夜がどこか遠慮する事無く話していた柊牡丹に興味をそそられたのだ。そして話しかければどこにでも居るような普通の男子。だが、彼には夢があった。そしてその夢の為に桜蘭来る覚悟。彼ではなく彼女だった。兄のフリをし、夢を叶える為と言いきった彼女の自信に俺は惹かれたのだ。それは女性と言われてとても驚いたが、今更女扱いするなと逆に叱られた。どうやら俺が知っている女性達とはまるで違うらしい。

「竜胆!」

「こら、環!牡丹!牡丹だから!」

おっと失礼。思わず本名を言ってしまった。が、彼女は実は本名を呼ばれると嬉しそうな顔をするのだ。同級生に名を呼ばれない、という事は辛いだろうし、彼女と接して気付くのは竜胆は実はお喋りが大好きでよく笑う子だという事。鏡夜と張り合える口を持っているのだ。

「で、何?」

「俺はホスト部を作ろうと思う!」

「ホスト部?何それ――…あぁ、環じゃなくて鏡夜。教えて」

何故俺じゃダメなのだ!そう言う前に竜胆の視線は鏡夜に移っていた。そして鏡夜が説明を終えると竜胆は腹を抱えて笑い出した。

「あはは!相変わらず突拍子も無い事を思いつくわ、環は!でも、そういうのは嫌いじゃない、楽しそう」

後気付いた事追加で。彼女はイタズラが好きそう。悪知恵が働く様だ。

「竜胆もそれに入ってくれるだろう?」

「…それなら部に入れるし…女装趣味という噂を出すのも簡単――…じゃあ、条件があるわ」

「条件?」

すぐのんでくれると思ったのに。俺は首を傾げた。

「まずさっき名前に上がっていた常陸院光と馨を入部させる事。自分の名前は出さずにね」

言い終えた竜胆は優しく微笑んでいた。

「それが出来たなら自分は喜んで入部させてもらう。あ、でも条件プラスで部全体で自分の秘密を守る事ね?環の本気を見てみたい。だから見せて?」

まるでそれは挑戦状。女性にそんな事を言われたら頑張らないはずがないだろう?おっと。そんな事を言ったら竜胆に怒られてしまう。

「…やってやろうじゃないか!竜胆に見せて差し上げよう!須王環の本気を!」

「コラ!環!牡丹だ、牡丹!」

何度か軽く叩かれた。それでも俺は初めてだったのだ。同年代の女子に頭を叩かれる事等今まで無かった。ここまでやんちゃな女の子を見るのも。

「なぁ、環。あの日何故竜胆に声をかけたんだ?」

「…寂しそうだと思った。一人でいる目が俺と似てる気がした」

誰かの為に何かをしているのは俺も同じ。でもそれが自分の為でもある。当然話を聞くまではそんな事に気付かなかった。多分俺は無意識に竜胆の笑顔を探していたのかもしれない。ただ聞いてみたかったのかも。

――一人は寂しくないか?と。俺は寂しいからさ。




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