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夏休みが明け、秋の風が吹こうとしている桜蘭学院。南校舎の最上階北側廊下のつきあたり。扉を開けるとそこに吹くのは琉球の風でした。本日の衣装は光と馨の見立てだった。彼等はバカンスに行けなかった代わりに沖縄に行っていたのです。
「「めんそ〜れ」」
紅型を身に纏った彼等。ハルヒはと言うとじっとドラゴンフルーツを持ったままにらめっこしていた。
「見慣れないフルーツばかりでどうやって食べたらいいのかな…と…この“ドラゴンフルーツ”って皮ごと食べられるんですかね?」
どう見ても食べられないのだが、ハルヒにはそれが食べられる様に見えるのだろうか。それでもハルヒの愛らしさにきゅんとするのは一同。
「はは、そうかハルヒは初めてだったか。皮は食べられないんだよ、貸してごらん」
「え…そんなまさか鏡夜先輩の手を…」
ハルヒから奪ったドラゴンフルーツはそのまま崇の手へ。だから無駄な事には悩まずに接客してね、との事だ。
「ハルちゃんよかったねぇ〜こっちの飾りのフルーツも持って帰る?」
「いいんですか?嬉しいです」
「お父さんとメイちゃんにも食べさせてあげよう」
「「メイちゃんてもう自宅に帰ったんじゃないのー?」」
それでもメイはたまにご飯を食べに来るらしい。ならば、私も行かなくてはならない。
「ハルヒちゃん。これあげるから俺もご飯食べに行っていい?メイちゃんと話したいし」
彼女とは意外にファッションやらメイクの話で盛り上がるのだ。
「うむ!俺もメイちゃんとはよくメールするぞ?つい昨日も面白い事を聞いたのだ。驚くなよ諸君!庶民の学校では――…」
運動会なる青春のイベントが…環はずっとそんな話をしているが、誰も聞いてはいなかった。
「ああ、ハルヒ。こっちのドラゴンフルーツも持って帰っていいぞ。俺は正直苦手な味だしな」
「え…そうなんですか?」
ハルヒは崇に剥いてもらったドラゴンフルーツにフォークを伸ばした。そして口に入れて感想。
「うーん…確かにフクザツだけどなんとなく美味しいですよ?」
「“なんとなく”美味しいって意味があるのか?俺にはよくわからんな。こういう食べるメリットを感じさせない味はどうも…」
「笑わせるな鳳鏡夜!」
鏡夜の言葉を遮った人物。振り返ればそこに居たのはいつかのアメフト部の三人だった。
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