102 (1 / 5)



夏休みが明け、秋の風が吹こうとしている桜蘭学院。南校舎の最上階北側廊下のつきあたり。扉を開けるとそこに吹くのは琉球の風でした。本日の衣装は光と馨の見立てだった。彼等はバカンスに行けなかった代わりに沖縄に行っていたのです。

「「めんそ〜れ」」

紅型を身に纏った彼等。ハルヒはと言うとじっとドラゴンフルーツを持ったままにらめっこしていた。

「見慣れないフルーツばかりでどうやって食べたらいいのかな…と…この“ドラゴンフルーツ”って皮ごと食べられるんですかね?」

どう見ても食べられないのだが、ハルヒにはそれが食べられる様に見えるのだろうか。それでもハルヒの愛らしさにきゅんとするのは一同。

「はは、そうかハルヒは初めてだったか。皮は食べられないんだよ、貸してごらん」

「え…そんなまさか鏡夜先輩の手を…」

ハルヒから奪ったドラゴンフルーツはそのまま崇の手へ。だから無駄な事には悩まずに接客してね、との事だ。

「ハルちゃんよかったねぇ〜こっちの飾りのフルーツも持って帰る?」

「いいんですか?嬉しいです」

「お父さんとメイちゃんにも食べさせてあげよう」

「「メイちゃんてもう自宅に帰ったんじゃないのー?」」

それでもメイはたまにご飯を食べに来るらしい。ならば、私も行かなくてはならない。

「ハルヒちゃん。これあげるから俺もご飯食べに行っていい?メイちゃんと話したいし」

彼女とは意外にファッションやらメイクの話で盛り上がるのだ。

「うむ!俺もメイちゃんとはよくメールするぞ?つい昨日も面白い事を聞いたのだ。驚くなよ諸君!庶民の学校では――…」

運動会なる青春のイベントが…環はずっとそんな話をしているが、誰も聞いてはいなかった。

「ああ、ハルヒ。こっちのドラゴンフルーツも持って帰っていいぞ。俺は正直苦手な味だしな」

「え…そうなんですか?」

ハルヒは崇に剥いてもらったドラゴンフルーツにフォークを伸ばした。そして口に入れて感想。

「うーん…確かにフクザツだけどなんとなく美味しいですよ?」

「“なんとなく”美味しいって意味があるのか?俺にはよくわからんな。こういう食べるメリットを感じさせない味はどうも…」

「笑わせるな鳳鏡夜!」

鏡夜の言葉を遮った人物。振り返ればそこに居たのはいつかのアメフト部の三人だった。


[prev] [next]
[bkm] [TOP]
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -