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「そろそろだな」
鏡夜が時計を確認すると控え室の扉が開いた。そこには崇に抱えられたハルヒの姿。
「お、来た来た」
「な!?ちょっと一体」
「はいはい、いーからさっさと着替える!」
竜胆はハルヒの腕を掴んでカーテンの中へ飛び込んだ。
「ちょ、竜胆先輩っ!一体何ですか!?」
「大丈夫…今から楽しい事が起こるだけだから…!早く着替える!」
その笑顔が妙に怖いんですが…と言うか勝手に脱がさないで下さい!そう思いながらもハルヒは急かされるように用意されたドレスに身を通した。
「ハルヒちゃん、目伏せて。下向いて」
ラインを引く竜胆の横は光がチーク、馨がウィッグの準備にかかっていた。
「いいか?リミットはパーティークライマックスまでの20分。既に2−Cの教室に珠洲島氏を呼び出してある」
「うまく気持ちを聞きだしてね」
これは環が計画した事だった。やはり環があのままの二人を放置するはずがない。
「ハルヒちゃん。靴はこれね」
「こらっ!全員でこっち来てどうする!お客様の相手も――」
環はそこに居たハルヒの姿を見て放心状態だった。それもそのはず。変身させられたハルヒはどこからどう見ても可愛らしい女の子にしか見えなかった。
「「よっしゃ!行ってこい!」」
ハルヒを見送り、皆は定位置へとつく。
「あのラブレターで良かったの?」
「呼び出せれば問題ないだろう」
ラブ…と書き始めた時点でそれはハルヒのイメージとはまるで違うが、確かに鏡夜の言う通りだと竜胆は笑みを浮かべた。
「私が行ければなぁ」
「お前が行けばすぐにバレるだろう。普段から女装しているのは有名、竜胆の意見は男前過ぎる。先が読めるな」
男前過ぎるってそれ褒めてないよね?まぁ、それもそうかもしれない。男ならはっきりと言ってしまえ、そう終わってしまいそうだ。そして鏡夜は腕時計に目をやった。カウントダウンが始まる。窓側に向かえば中庭のもみの木が見える。そこに駆け込んできた春日姫と珠洲島氏。ゼロと言う声と同時に中庭ももみの木がライトアップされた。
「メリークリスマス!不器用カップルに祝福あれ!」
そんな中で微笑む春日姫と珠洲島氏を見れば成功したとすぐに分かる。流石環。やる事に抜かりない。誰かの為に一生懸命になれる環は素晴らしい。竜胆は素敵な友人を持ったと思った。そしてラストワルツ。
「牡丹の君は男性の格好してても素敵ですわ」
「流石に女装じゃエスコートも格好つかないからね」
微笑んでからダンスを始める。それをぼんやりと見ているのはハルヒ。ハルヒは慣れないヒールの靴で走ろうとして足を捻ったのだ。当然ダンスが踊れるはずもなく一人椅子に座っていた。
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