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「わぁー!げーせんね、これがげーせん!」

「「竜胆ねぇテンション高いな」」

「だって初めてなんだもん、環に言われた通り今日はカードじゃなくて現金持ってきたわよ。小銭なんて久しぶりに見た気分」

山手線一周から巣鴨、そして今日はゲーセンツアー。当然ハルヒは喜んで案内はしてくれないので、皆にとってメイも貴重な存在になっていたのだ。そして環はと言うと美鈴とメイとの事を諦めてはいない。むしろ作戦中なのだ。

「へぇ。環が美鈴さんの所で手伝い。そして美鈴さんの作ったジャムやレシピを持って行く。いいねぇ、それは環らしいわ」

味が分かる、とか言うのだろうね。その発想はきっと環だから出来る事だ。何でも会わせれば良いというわけではない。時間をかけなきゃいけない事もある。

「こ、これがプリクラ?へぇ。中は意外とちゃんとした作りに……何か背景選べるらしーよ、コレ!」

やばい、何か楽しそうだ!竜胆は嬉々としながらプリクラ機に近寄り店のプリクラを制覇した後、一つのUFOキャッチャーの前に張り付いたまま動かない。

「竜胆?何してるんだ?」

「鏡夜。あれ欲しい」

「は?どれだ」

「あれ。アントワネットみたいで可愛いんだもん」

可愛らしい犬が赤いリボンをつけているだけのぬいぐるみを見て竜胆は目を輝かせていた。本当にこう可愛らしい物には弱い。それらを目の前にすると純粋なまでの眼差し。

「言っておくが、俺はUFOキャッチャーなんて初体験だからな」

「でしょうね。でも始める前から言い訳なんて鏡夜らしくない」

小銭を入れて、アームの稼働域を確認してから鏡夜はボタンを押した。真上に来たアームはゆっくりとお目当てのぬいぐるみを掴み上げた。ハラハラとそれを見て落ちるポイントに入った瞬間竜胆は目を丸くした。鏡夜はそこから景品を取って竜胆に押し付けた。

「…わ、鏡夜って実はUFOキャッチャーの才能があったのね…将来食べるのに困ったらプロになれば良いわ」

「プロがあるのか…?」

「知らない。…でも、すごいわ。今すっごくドキドキした。――多分ここに来る子達はこうやって遊んで好きな人と一緒に感動を味わうのね」

は?今何と――…それを聞く前に竜胆は嬉しそうにぬいぐるみを抱えながら光邦の所へ走って行った。何なんだ、あいつの思わせぶりの言葉は。常日頃からそれは感じていた。たまに勘違いしそうになる。そしてあいつは散々持ち上げておいて落とすんだ。“協力してあげる”と。そんな優しさはいらない。そんな優しさよりも先に気付け。まずは自分に優しくなれ。そして俺がどんな思いでこの感情を殺しているのかを。俺は何を望んでいるのかを。

「おぉ!アントワネットそっくりではないか!俺も欲しい!鏡夜、俺にも取っ――」

「勝手にやれ」

「そんなに好きなら」

「竜胆ねぇも犬飼えば?」

「…欲しいんだけど、家動物禁止なんだもん〜」

それからというもの、部員達はメイを引っ張り回し、環は軽井沢と東京を行ったり来たり。色々仕掛けてはいるがメイが気付いた様子は特にはないらしいが、少し嬉しそうな顔をするらしい。そして動物園、カラオケ。行ける所は行き尽くし、夏休みを満喫する事になる。

「…暑い…ダメ、ぎぶあっぷ〜」

が、約一名夏バテ中の姿もあったとか。




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