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「…柊さん」

竜胆は話しかけられ振り返るとそこには噂の渦中の伽名月が居た。伽名月に話しかけられるのは初めての事で竜胆は大きく驚いた。

「伽名月ちゃん、どうしたの?何か用でもあるのかな?」

「…あなたが埴之塚さんと仲がよろしい様だから」

敵情視察に、その言葉に竜胆は首を傾げた。光邦と仲が良いと言うのなら常に一緒の崇で間違いないだろう。それがどうして自分なのだ?確かにおいしいお菓子同盟を組んではいるものの、一見して分かる様なものでもない。

「何故そう思ったの?」

「…相性呪いで、埴之塚さんの意識が柊さんに向いていると」

その相性占いは間違いだ。竜胆は小さく笑った。

「それは呪いで出た事でしょう?伽名月ちゃんはそれだけの理由でハニー先輩を諦めるの?」

「いいえ。諦めません。むしろ闘うつもりです」

本格的に呪詛返しが使える人を雇った方が良いのかもしれない。そんな冗談はさておき、竜胆は伽名月の頭に手を乗せた。

「いいね、恋に前向きの女の子。俺は嫌いじゃない。でもね、相手を傷つけてまで魂を手に入れてもその先に何も無い事は学んだ方が良いかな」

竜胆はそれだけ言うと手をひらひらさせてから歩き出した。いけない。大人気ないと思った。今完全に自分は嫌味を言った。自分が出来ない事をしているからと言って嫉妬して嫌味を言って良い理由にはならない。そんな見苦しい自分は嫌いだ。嫉妬してもそれを糧に出来る程の器量があれば良いのだけれど、生憎自分にはそんな器量は備わっていないらしい。


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