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「あれ?鏡夜。あなたの旦那は?」

「…環なら今日風邪で休むと連絡があった」

それを聞いて竜胆は驚いた。それはもう驚愕レベルだ。環が風邪ですって?槍でも降るんじゃないか…それは天変地異の前触れではないか、そう思えるレベルだ。そして竜胆と鏡夜の携帯が同時になった。ん?と二人で携帯を見るとそれはメールで環からだった。同時送信してきたのだろう。

[件名]
しぬ
――――――
ねつのど
はぬむず
(^0^)ノ

――――――

当然その話をすれば誰もが竜胆と同じ様に驚きを通り越した驚愕の表情を浮かべる。

「うわあ…あたかも風邪薬のCMのようだネー」

「使用する顔文字も間違ってるしネ。このメールは長期保存しておいた方がいいよ」

「勿論保護済み」

竜胆は親指を立てた。

「つーか殿が病欠なんて槍でも降るんじゃ…」

「天変地異の前ぶれかも…」

…ちょっと待って。自分も全く同じ事を思っていたのだけれど…。竜胆は気まずそうに光と馨から目を逸らした。

「ハルちゃん逃げなきゃ!雷が来ちゃう!」

「そんな…環先輩だってたまには風邪くらい…」

そう思うのはハルヒだけで、お客様やクラスメイト達も環の風邪に驚きを隠せない。

「ええ!?環様が病欠!?」

「まさか環様が…」

「生まれてこの方虫歯一つ無い事と病気知らずを常日頃自慢されてる環様が…」

それはきっとアホ過ぎて気付いていないせいだと思われる。だが環の風邪は珍しい事もあるんだね、そう済む話ではなかったのだ。

「そういえば王女が帰国なさる少し前から御様子がおかしかったかも…」

「「殿がおかしいのなんていつもの事じゃん」」

確かにおかしかったらしい。紅茶に砂糖を30杯も入れた後一句詠んだ。“砂糖より甘くていいのか父の愛 by須王環”それには笑いを堪えきれない。

「そういえば授業中も一心不乱に育児の本を…」

「私は親子関係について念入りに聞かれましたわ」

「そういえば私も…」

確かにそれはおかしいかもしれない。いつもおかしいが更におかしい。そして極めつけは環が崇を体育館裏に呼び出して聞いた事は“モリ先輩は…ハニー先輩にちゅうしたいと思った事がおありですか…!”らしい。当然崇は“ない”と答える。それを考えれば環は崇の事が好きだったのだとれんげは語ったが、それを竜胆は首を捻って考えると案外簡単な事に気付いた。親子関係に悩んでいる環。それはホスト部での家族設定で間違いない。育児の本を読んでいるのだから。そして子供達と言えば竜胆、光馨にハルヒ。れんげの話が本当ならば環は子供達の誰かにちゅうしたくなった…と考えられる。そしてそれが当てはまるとしたらハルヒだけだろう。

「…とうとう来ちゃったのかなぁ」

誰かが思いを自覚して、一歩踏み出しちゃう時が。皆平等に応援してあげなくちゃならないんだろうな。…そう、皆平等に。授業が終わり、今日は部活をやめて皆で環のお見舞いに行こうという話になった。車に乗り込んでいく面々。

「鏡夜!」

「ん?」

「…好きな子が出来たら私に教えてよね」

竜胆はそれだけ言うと常陸院家の車に乗り込んだ。




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