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そして次の日。ハルヒが実が女という噂は全く流れておらず、代わりに笠野田がホスト部へお客さんとしてきていたのだ。きっと彼もハルヒに恋心を抱いてしまった一人なのだろう。ハルヒがお茶の準備をしている間竜胆が笠野田の隣に立った。

「あら、笠野田君〜お元気?」

「……は?」

「何が“は?”?」

「えっとあんた…」

ん?もしかして女装バージョンで会うのが初めてだから分からないのかぁ?竜胆は小首を傾げてから笑顔を浮かべる。

「あら、やだ!気付かなかったワケ!?いや、君鈍感ねぇ!柊牡丹よ?ここでは牡丹の君としてこれで通ってるのよ」

竜胆は周囲の目に笑顔で手を振って答える。色んな方向から久しぶりに牡丹の君よ!お美しいわ!なんて声が上がっている。

「カサノバ君、いらっしゃいませ。今日はお客様なんだね」

ハルヒがお茶の準備を終えて席についたのを見てから竜胆は自分のポジションへと歩いた。話しかけられただけで顔を赤くするなんて何て初心なのかしら…!可愛らしい!竜胆は口元を押さえながら皆のもとへ集まる。先ほどから笠野田の存在が気になって仕方ない男達。光と馨がちょっかいを出してから二人は鏡夜に詰め寄った。

「もー!鏡夜先輩のバカ!なんであんなヤツ客に入れたんだよ、舎弟と和解できたんならもううちの部には用ないはずじゃんか!」

「だから“客”としてなんだろう?ハルヒの秘密も守ってくれてるようだしお断りする理由がどこに?それにほら。彼のおかげで今日は客入りも2割増しでね」

確かに今日のお客様方はホスト部員達よりもハルヒと笠野田の二人を見に来ているようで、ホスト部員としては立場がない状態。そして一番泣き叫びそうな環は未だに呆然としたままである。

「たーまーきー?」

竜胆は環の目の前で手を振ってみるも全くの無反応。

「ちゅーしちゃうゾ?」

その言葉にだけは瞬時に竜胆の顔を手で押しやった。

「…何。この扱い。本当にする気はなかったけど、結構むかつくんですけど」

なんなのよー!竜胆は環の頬を抓るもそれに対しても無反応の環。ちゅうされるよりも抓られた方が良いって言うの!?キィー!竜胆は歯を食い縛った。

「なんか部の人達騒がしくねーか…?…大丈夫なのか?あんなテンション高い人達と…ふ…藤岡はほらおとなしいっつーか…」

「うーん…でも元々は自分のせいだし…ああ見えて部の人達もとてもよくしてくれるし、ほらコレ」

ハルヒはポケットから部員から貰った物を笠野田に見せた。

「なんかロシア王朝時代の装飾品をモチーフしてあるんだって。ありがたすぎてとても身につけられないよね…」

それは細密肖像画付きブレスレット。ノリで参加したが自分があれを貰った時は間違いなく部のオークションに出品しているだろう。竜胆はハルヒと笠野田を見ながら思った。

「それに先月はスーパーの広告でハムの特売にマルつけてるの見られちゃってね、それは豪華なハムをわざわざ家に届けてくれたんだ…」

出張コック。ハルヒが食べるのを待っているだけ。わざわざ切ってくれるだけの存在にハルヒは驚きすぎて全然味を覚えていないらしい。


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