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環が窓際でモデルポーズのままたそがれていた。それを見て竜胆は小さく笑いを零す。それには理由があった。ハルヒのレッスン相手だった。

「自分が練習相手になりたかったんだって。身長的にハルヒの女役なんか無理なのにね」

ホスト部にはハルヒの相手役を勤められる背の人間がいなかったのだ。180超えの環は当然却下だ。崇に至っては190超え。光邦こそ小さいが逆に相手にするのは難しい。他三人も180センチ前後の背。と、持ち上がったのは竜胆だったが、彼女も女性にしては高い方。ハルヒより10センチ以上高ければ、結局誰かに頼む他ない。そして選ばれたのは最近ハルヒを指名した春日姫だったのだ。

「私もそろそろ練習しようかしら。普段エスコートされる側だから分からなくなっちゃうのよね。よし、馨。ちょっと付き合って」

「何で僕なわけ?」

「身長で考えて私の相手役が出来るのは光と馨くらいかなと」

「そんなに差ないよ、殿と鏡夜先輩と」

確かにそうだけど、そう言いながら竜胆は小さく微笑んだ。

「環はたそがれてるし、鏡夜はお礼取られそうだし、光はすぐ投げ出しそう。軽く付き合ってくれるのが馨だと思ったからよ、これでどう?」

そう言うとま、いっかと馨は面倒くさそうに言い放つ。本当に素直じゃないんだから。竜胆は手を伸ばして馨の手を取った。

「確認だけ、そんなに時間は取らせないわ」

休憩中のハルヒと春日姫の声が聞こえるとカップが倒れていた。小さな火傷をしてしまったとハルヒと春日姫は出て行った。大事はないだろうと竜胆は再び練習に戻る。そのすぐにダンスを踊ってきた身長差が大きい崇と光邦も、慌てて走って行った。

「忙しいわね、皆」

「竜胆ねぇ!僕とも踊ってよー」

「あら、光ちゃん。大丈夫よ、お兄ちゃんは馨ちゃんを取ったりはしないから」

「そういう事じゃないヨ」

「お兄ちゃん難しい事は分かんなーい。さ、三人で踊りましょうか」

竜胆は笑顔で光と馨の手を取った。三人で踊れるなんてはずもなくクルクルと回るだけ。でも三人の顔は笑顔だった。その笑顔の中に竜胆は心を隠す。ほら、貴方達も気付いて。血の繋がりの無い人が君達を簡単に見分けてる。後はその心を少し開くだけ。

「竜胆。今いいか?」

「分かったわ」

三人の手が離れて、竜胆は鏡夜の後ろを歩く。二人陰の方に行けば竜胆は小さく笑った。

「何だ?」

「鏡夜、もしかしてヤキモチ?」

「くだらない事言うのはその口か」

鏡夜は持っているファイルを竜胆の顔に軽く当てた。

「クリスマスパーティーの衣装についてだ」

「普通に軽めのスーツにしましょう。きっちりし過ぎるのも疲れるし、皆何度も踊る事になるのだし。手持ちので構わないはず。あ、料理の方はどうなってる?」

「最終確認済みだ。抜かりは無い」

「プチケーキだけは忘れずにね」

それが楽しみなんだから。竜胆は笑みを浮かべる。

「ねぇ、鏡夜。気付いてる?ハルヒちゃんが入ってきてからハルヒちゃんが中心のホスト部になってる」

「…あぁ、そうだな」

「楽しいねぇ」

後ろから入ってくる光りはとても眩しく暖かかった。きっと外に出たら空気が澄んでいて気持ち良いわ。そう言う竜胆の笑みは儚げに見えた。




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