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やはり笠野田はハルヒの着替えを見てしまったのだ。それは故意ではなく偶然の事故だったのだが、事故だからと言って許されるわけではない。もちろんホスト部全員に責められるはめになる。
「「見ィ〜たァ〜なァ〜見た?見たねボサノバっちどこまで?僕らも知らないつつましやかなハルヒの体を見たわけ?どこまで?」」
随分と自分本位な責め句。
「見てねぇ!イヤちらっとは見たけど…一瞬でよく…」
「あのねぇボサノバ君。僕…はっきりしない男ってクズだと思うんだよねぇ…」
当然ハルヒが女だと気付いた事になる。
「「とりあえずぶん殴って記憶失くさせるしか」」
よし来た、と笠野田の体を羽交い絞めにして攻撃態勢を取る。
「こらこらやめておけ。犯罪はもみ消すのは面倒だ」
まずそういう問題ではない。竜胆は口元に新しいハンカチを当てたままそれをぼんやりと見ていた。
「「鏡夜先輩は何でそんなに冷静なのさ!見なよ!殿なんかあまりのショックで抜け殻じゃん!」」
そう言う環はボケーッと立ったまま固まっていた。放心状態。目の前で手を振っても瞬き一つしない。
「バレてしまったからには話し合うしかないだろう。笠野田君…ハルヒはどうしても人には言えない事情で女である事を隠している」
どうしても、と言うよりは借金のせいなのだが。ホスト部にいるのは“男”だとアピールする為というのも嘘も方便。むしろその理由ならば竜胆の方が的確だ。
「君に口止めする権利は俺達にはない。だがこれだけは覚えておいてくれないか。鳳家はもちろん我々の家を敵に回す事がどういう事なのか…ね?」
鏡夜はにこやかに言う。これは話し合いではない。明らかに脅しだと笠野田は思った。
「ちょっとカサノバ君脅すのやめて下さい。カサノバ君驚かせてごめんね。あのね他の人に言ってもいいよ。こっちは全然大丈夫だから」
ハルヒが着替え終わり、準備室から出てくる。見られた本人の方がこれなので部員達はこれ以上何も言えなくなったのだ。だけれど皆必死にフォローする。そう、皆必死に。
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