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『……なら俺はお前の夢を叶える手助けをするさ、竜胆』

『…それを知っていてまでも貫き通す夢か。柊君はそこまで本気なのだな。格好良いよ。俺は嫌いじゃない。俺は協力してあげたい』

これは私が二人の男に惚れた時の言葉。


柊竜胆の中学生日記@


それは中等部三年に上がる前の話。牡丹が言ったのだ。夢があるからそれを叶えたい。私は二言目には協力すると頷いていた。そして二人揃って両親に願った。そしたら条件として言い渡されたのがお互いがお互いとして高校生活を送る事、なんともふざけた要求だったが、役者を目指す牡丹にしてはピッタリだったのかもしれない。演じ続ける、という大変さが。そして後日私は牡丹として。牡丹は私として。(中等部から来たのはまずは練習期間の為。お互いが大丈夫そうだと思えばそのまま。危ないと思ったらたまに交換にしようと)最低限の顔名前だけを一致させて。だが、牡丹は海外にいた私でも分かるくらい人付き合いをしていない。牡丹として過ごすなら私は大好きなお喋りもおしゃれを出来ない。

「顔写真は変わったが、名前性別はそのままだ」

そして初日で言われた一言は私の事情を知っている者の言葉だった。それに驚くも追求したいとは思えなかった。先延ばしにしていた。バレる時はバレるとこの時点では諦めていたのかもしれない。話しかけてきた鳳鏡夜をさり気無く観察したが、友人になりたいタイプでもない。むしろ嫌いなタイプだった。自分の腹の内を隠して愛想笑いしている彼はとてもつまらない。そして男として生活しなきゃいけない事に、誰とも喋らない事にストレスは必須だった。腹の探り合いの様な会話なんてしたくもない。鳳鏡夜との会話は結局そういう事になってしまうから避けていたのも事実だ。再び話すきっかけがあり、私は悪態を吐いてしまった。謝ろうと機会を伺っていた時、彼は見て分かる程変わったのだ。以前の様な愛想笑いもするが、気の許せる人間が出来たのか、その人物の前では腹黒い笑みを見せる。それを見た時私は笑ってしまったのだ。良かったね、心の中で呟いて、それと同時に羨ましいと思った。心の内を話せる友人が出来るのは鳳鏡夜本来の性格。その人の価値は友人によって決まる、まさにその通りだった。

「須王環…」

あの鳳鏡夜を変えた人物は何が気に入ったのか私にもやたら絡んできていた。屈託のないその笑顔や喋り方、話す事全てキラキラ輝いてみえた。私もそういう風に生きたい。いやでも…夢が自分を邪魔した。だから、聞いてみたんだ。

「…聞きたい事があるんだ。俺はさ、夢を叶える為に桜蘭に来た」

この夢が正しいのか、自分のやっている事が正しいのか。それがどうしても聞きたかった。彼等なら大丈夫だろう、という直感もあった。


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