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『君は独りでしょう。…は、笑える。鳳君ってバカで』

それはまだ俺らが一人同士だった頃の事。


鳳鏡夜の中学生日記@


鳳は由緒ある公爵の血筋。財閥体制の昔より医療分野に進出頭角を現す。長兄は医学部卒業後父と同じ病院で後継者としての修業を。次兄は医学部在学中。卒業後はMBAを取得し兄のサポートにあたる予定。そして三男の俺が中等部二年冬の話。父の命令も無く、普通に過ごしていた。普通に大手医療機器メーカーの御曹司と仲良くし、右肩上がりの衣料品メーカーの息子に有名代議士の末息子と、ミーハーな令嬢達に伯父が有能な投資家である旧爵家の一人息子との付き合いは上々。先日妙な相手に話しかけられた一方的な謎の約束のせいで苛立ちがこみ上げるが、そこは顔に出さないのが俺のやり方。そんな俺に一人の人物が視線の端に映りこんだ。まるでどこが寂しげな横顔は誰かを探している様な人物。俺はその人間の視界に割り込んでやった。

「…何か…?」

彼の名は柊牡丹。化粧品を始めとした美容整形にまで長けている柊家の次兄。桜蘭幼等部の頃からAクラス。家柄、成績共に優秀。だが協調性が欠けており一人を好み、基本は一人で行動。特別親しい友人は無し。部に所属する事も無いそんな一匹狼だった。俺を睨みつける様な目は鬱陶しくて仕方ない。どうしてそんな反抗的な目をするのか。俺だったらまず考えられない。美容と医療は意外にも切れない関係で、お互い媚を売っても良いレベルだと思うのに彼は俺が一生理解出来ないタイプだろう。人を小ばかにした様な態度に俺はそいつの腕を引いて廊下へ出た。正直何をしたかったかは分からない。

「離せよ。何、突然。人気者のオートリ君が何の用」

それは嫌味だという事がすぐに分かった。だったらこっちも返してやろうと俺は小さく微笑んだ。

「生徒手帳を見せてもらっても?」

「…は?」

柊牡丹は眉間に皺を寄せた。

「…何故見せる必要がある?」

「見せられない事情でもあるのかな?」

ちっと小さな舌打ちをすると柊牡丹は胸ポケットから生徒手帳を取り出して俺の胸に叩きつけてきた。生徒手帳を確認して俺は驚いたふり。

「顔写真は変わったが、名前性別はそのままだ」

その言葉に柊牡丹は驚いた顔をした。ようやく崩せたその表情に俺は勝った様な気になった。そしてわざと相手に疑問を抱かせたまま俺はその場から立ち去った。どうせ奴はその内気になって仕方ないと言う様に俺に話しかけてくるに違いない。そう思っていたが、柊牡丹は話かけてくるどころかこちらを見ようともしないのだ。これで最後、話しかけるのはこれで最後。俺は何がしたい――…?


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