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「いいねチカちゃん。勝負は一本。僕が勝ったら悪いけど今まで通りにさせてもらう」
学院のどこかにあった吹きざらしの丘は決闘にはもってこいの場所だった。皆光邦と靖睦の決意を心して見ていた。
「…俺が勝ったら?」
「甘いものを食べるのをちょっとだけ減らす。少なくても夜中は食べない」
「わかった」
いいんだ、それで…その程度で良いのか。今自分を見失っているのではないかと竜胆は思った。
「準備はいいな?では始め!」
崇審判のもと、決闘は始まっていく。
「チカちゃん覚悟!」
少しの組み手で、なんとなく違和感が生まれた。光邦が取り出した武器は以前靖睦が使用していた折りたたみ式の棍棒だった。そして崇は両者の戦いを解説する。
「少なくとも光邦は意図的だろう」
おそらくこの後靖睦が手裏剣を出す。と崇が言うと靖睦は本当に手裏剣を出していた。
「…俺は長年二人の手合わせを見てきたが、靖睦は必ず前の手合わせで光邦が使った動きを取り入れてくる。光邦はそれに気付いてあえて靖睦がその技を出すきっかけを作ってやっている。宇宙人などと言っていても武道において靖睦が光邦を尊敬し、近づきたいと思っているのは明らかで、目には見えなくても繋がるべき所でちゃんと繋がっている。兄弟というのはそれでいいんじゃないかと俺は思う」
崇の言葉に竜胆は小さく微笑んだ。一緒に居るから仲が良いわけでもないし、遠く離れているから不仲でもない。傍から見たら不仲でも実は分かり合っている。そういうのは理想。それは兄弟だけには当てはまらず親友でも良いのだと思った。もう私は親友という地位を求めない。望まない。出来るならそういう肩書きも性別も関係無しに隣に居られる存在として。
「それにこの勝負なら心配ない。光邦はおそらく靖睦に勝ちを譲るつもりで…」
崇がそう言いかけた時光邦は行動に移した。
「チカちゃん覚悟ぉ!」
そして光邦の蹴りがきれいに靖睦に決まった。靖睦の負けが決まった瞬間だった。
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