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「環にしては面白そうな事を思いつくじゃん!」

竜胆は手を合わせて喜び、目を輝かせた。

「だろうだろう?鏡夜も面白そうだろう?貧しい庶民は度々こうした催し物を開いては旅行に行けないむなしさを癒しているという…各地の名産品を手にする事で少しでも旅行気分を味わおうというわけだな」

環の言葉に竜胆は何度も頷いた。

「そこで我々はこの庶民文化を身を持って体感し、ハルヒの心情をより理解しようというプロジェクトを立ち上げたのだ!そういうわけでさあ行こう!すぐ行こう!」

「「あ、ちなみにプロジェクトの目的に合わせて今日はハルヒ不参加だからよろしくー☆」」

笑顔で言う彼等を睨み付けたのは寝起きの鏡夜。皆で寄って集って鏡夜を起こそうと彼を揺する。

「せっかくの休日に若者が昼近くまで寝ていていいと思ってるのか!」

鏡夜は突然がばあと音がしそうな勢いで起きた。その瞬間捕まる自分の手に竜胆は体をビクリと反応させた。

「…言っておくが俺が寝たのは明け方5時だ。せっかくの休日前に若者が夜更かしして何が悪い」

痛い痛い痛い痛い。キリキリと軋む様に掴まれている自分の腕を引っこ抜こうとするが鏡夜の手は簡単に外れない。

「大体誰の許可を得て人の寝室に上がり込んでる?いい度胸だな、このカス共」

誰か助けて、竜胆はそんな視線を皆に送るも鏡夜の恐怖から誰もそれを受け取ってはくれない。

「何が庶民文化だ。庶民ネタにはいい加減飽きがきてるんだよ。行きたきゃ勝手にしろ、マンネリ人間め」

「……勝手にしていいのか…?」

環の問いに答えずに鏡夜はかくりと眠りに入ってしまった。

「うなずかれた!魔王様のお許しが出たぞ!」

「「確かにうなずかれた!」」

頷いてはいない様に見えたがその拍子に掴まれていた竜胆の腕は解放された為に良しとしよう。そして寝ている鏡夜を着替えさせ、勝手に車に乗り込ませ、ハルヒを除いたホスト部員達は庶民デパートへと向かった。毎度の反応だが目をキラキラさせる面々。

「すごいよ見てよ!」

「なんか同じ服いっぱい売ってんの!」

「「大量生産だ!大量生産だ!竜胆ねぇ行こう!」」

「ちょっとま――」

竜胆の手は光と馨に引かれて強引に服売り場へと向かう。


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