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私事牡丹の君、改め柊牡丹、更に改め柊竜胆は目の前の起こっている出来事に困り果てていた。私が思う牡丹のイメージは人当たりが良く誰とでも分け隔たり無く接し、女装趣味を生かしメイク術はプロ並。頼れるお兄さんと言う事で男女問わず相談を受ける。少し誇張気味に話せば人気者、だという事だ。あくまで女装趣味という事で女性からの告白は当然の事、最近では男性からの告白もあるという困った次第だが、それはノーマルという設定なので断っている。そもそもホスト部に所属している身、誰からの告白も受けられない。そんな私の前に勇者が現れた。

「柊先輩…!好きなんです、是非私とお付き合して下さい!」


柊竜胆の観察日記?B


「…悪いけど、今は誰とも付き合う気はないんだよね。でも、ありがとう」

定石と化したセリフを少し俯き加減で吐けば大抵の人間は聞いて下さってありがとうございましたと笑顔で去って行くものだった。だが、目の前の彼女はそれをせずに未だに目をキラキラとさせている。

「私、何番目でも構いませんの!」

「…女の子がそう言う事言っちゃだめだよ。ちゃんと一番の人の、一番の人にならなきゃ。自分を卑下しちゃダメ」

そもそも何番目以前に一番目もいないのですが?やんわりと断っているのにどうしてそれに気付いてくれないのだろうか。竜胆は相手に聞こえない様に小さく溜め息を吐いた。目の前の彼女は顔を見た事がある。ホスト部のお客様の一人だったのだ。確かにいつも牡丹の君を指名する女の子。1−Cクラスだっただろうか。その辺りは覚えていないが、後輩だと言う事が分かる。

「どうしてもっ…どうしても牡丹の君とお近付きになりたいんです…!」

「そ、それは部で指名してもらえれば…いつだって話すし」

そもそも、そもそも私は女。どう考えても女性の告白を受ける自分はいない。せめてもの侘びにキスの一つあげる趣味もない。大抵ホスト部に来るお客様は分かっているはずなのだ。これは一時の感情だと。気分を味わえるだけ。そして家柄と整った外見を前に身分を弁えてしまう。自分が誰々とお付き合い出来るなんて…せめて気持ちを伝えるだけ。それでも良い、近くで見れれば。それは皆同じなのだから仕方ない。そんな気持ちを抱えたままホスト部に来ているのだ。モリ先輩のファンの子も本気になるが、気持ちを汲んでもらえるだけで充分、そう思っている。だからこそ私は目の前の子に困っているのだ。

「それじゃ足りませんっ!私、四六時中貴方と一緒に居たい…!」

危ない。そう思った。その言葉は私の事を全く考えていない言葉だとすぐに気付いた。自分が良ければ良いと思っているタイプだ。これ以上話を聞いていたらどうなるか分からない。私は苦し紛れに言った一言は彼女を一時的に遠ざける事に成功したが、それがきっかけでとんでもない事になるとは思ってもみなかった。


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