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長い休暇も終わり、秋の気配がし始めた桜蘭学院。南校舎の最上階、北側廊下のつきあたり。本日は小さなお姫様その扉を開いたのでした。
「おや…?これはこれは…珍しいお客様だな」
そこに居たのは桜蘭ホスト部警察でした。
「ようこそ迷子の子猫ちゃん☆」
小さなお姫様は彼等を指さしてとんでもない事を口にした。
「…ぎゃくはーれむ?」
その言葉に一同ピタリと動けなくなっていた。
「こりゃイカン。夏の終わりにプールへ行った時の水がまだ耳の中に…」
「総監殿はおマヌケさんだなあ〜」
「れんげ姫じゃあるまいし、こんな小っこい子が“逆ハーレム”なんてアダルト用語発するわけが…」
だよね、聞き間違いんだよね。そう思おうとしたのだが小さなお姫様は小さな指をさして言うのだ。
「しゅちにくりん?」
酒池肉林…!?
「めがねきゃら?おとこのこ?ろりしょた?すといっくけい?がりべん?きんしんそーかん?」
一人一人指さし確認をするかの様に。しかもそれは強ち間違っていない。そして最後に環を指さして目を輝かせた。
「おにいちゃま…!?」
小さなお姫様は環の胸に飛び込んで行った。当然環に妹が居たという事を誰もしらない。それを聞けば環も曖昧に俺は確か一人っ子だという。でも言われてみれば環の髪色と、その小さなお姫様の髪色は近いかもしれない。
「そもそも“メガネキャラ”と“お兄ちゃま”は同列の言葉なのか?」
「いいじゃないですか、自分なんて“ガリ勉”ですよ」
「それよりも“男の娘”と書いて“おとこのこ”。それをハルヒちゃんではなく自分に言う辺りが…」
知り尽くしている様な、今までのホスト部活動をまるで見てきたかの様な物言いだ。そしてどうして幼等部の女の子がそんな言葉を知っているのか。むしろ環よりもれんげの妹と言うならば簡単に信じられるのだが。
「お嬢ちゃん、お名前は?」
「きりみ〜」
「“きりみ”ちゃん?何かの間違いじゃないのかな…?」
そう諭すように言えばきりみは涙を浮かべておにいちゃまじゃないの…?と言う。そうなれば情に流されやすい環は無責任にも彼女を抱きしめて今日から君のおにいちゃまだと言う。
「無責任じゃないもん!ちゃんと世話するもん!」
「犬猫じゃないんだから…」
それこそ無責任じゃないか。竜胆は環の言葉に呆れて歩き出した。
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