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綾女が環を嫌っているのは誰の目にも見えていた。綾女の言い分としては雨の良さは知っているけれど、嫌い。それと同じように魅力的な人間だと分かっていても、生理的に受け付けない。という事だ。それは簡単に言えば環の事が大キライだという事だった。

「須王さん。昨日の日直でいらっしゃいましたわよね?日誌に少々不備があったようですけれど」

「それは申し訳ない。すぐに訂正を…」

「いえ、もうこちらで訂正させて頂きました。私はただ今後このようなミスがないようにと注意に伺っただけです。それと定規を使用出来る所は――…」

綾女の言葉はまだまだ続く。それに落ち込む環。それを慰めるクラスメイトの女性達。そんな光景を見ながら竜胆はぼんやりと呟く。

「城之内さんって可愛いよね」

「…は?」

「あの子絶対原石だ。眼鏡よりコンタクトの方が似合うし。髪も思いきってパーマをかければ絶対可愛いよ」

そう言いながら城之内の背を見ている竜胆を鏡夜は横目で見ていた。原石だの言うのは久々の発言だった。ハルヒが来て以来だろうか。それにしても最近の竜胆は忙しいらしい。女性達が嫌う梅雨時期という事で良い方法はないかと訪れる客は引っ切り無しだ。少し疲れた様に竜胆は鏡夜の机に突っ伏した。

「おい鏡夜、竜胆。彼女は雨で機嫌が悪いのか俺を憎んでいるのかどっちなんだ?」

「両方だろう。いいからお前等二人席に戻れ」

「イヤ、戻らん!おまえ達もこのビラ作りを手伝うのだ!」

そうして環が出したのはクマちゃんを探していますのビラ。しかも手書き。竜胆はそれ見たさに起き上がってから吹き出そうとした口元を押さえた。

「できれば放課後まで200枚欲しい!」

「…ああ素晴らしいデザインセンスだな。全部おまえが描いた方が人々の目に留まるんじゃないか?」

「当然だ。俺の手にかかれば100枚や200枚…」

そう言いながら環は自分の席へ戻った。そしてすぐにその周りには人が集まる。女性だけではなく、男子までもが環の側に居る。

「鏡夜ってば環の扱い上手過ぎ。それにしても環はアホね。カラーコーピーすればいいのに。と言いながらもすぐに出来ちゃいそう」

あんなに手伝ってくれる人がいるんだから。竜胆は腕を枕にした所にあごを置き、笑みを浮かべながら環の背を見ていたがそれを遮る何か。

「…鏡夜。何、その本を読めと?」

鏡夜が読んでいた本が竜胆の視界を遮るようにある。竜胆は首を動かして鏡夜を見上げた。

「あ、分かった。ヤキモチ?自分が環ばかり見てるから。なら、これからは鏡夜を見るよ」

そう言いながら竜胆は視線を動かさずにジッと鏡夜を見る。先に折れたのは鏡夜の方だった。鏡夜は持っていた本で軽く竜胆の頭を叩いた後本を開いた。


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