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季節が過ぎるのは早いもので既に春を迎えていた。皆と何度この春を迎えたかは秘密である。そして本日ホスト部は中庭で営業。桜咲き誇るそこは平安貴族の庭園でした。

「いけませんわ環様…これ以上近付けば貴方をお慕いする数多の女性に恨まれてしまいます…」

「姫…今ならばこの桜が我々の姿を隠してくれるでしょう。今だけは君だけの僕…そう…春の精霊が味方するこの瞬間だけは――…」

禁断の逢瀬プレイを見てハルヒは冷たい視線を送った。そしてその視線を動かせば貝合わせをしていた光と馨の双子がいつの間にか禁断の兄弟愛へ。春を連想させる遣り水を説明しながら秋の茶会の予約を受ける鏡夜に、二人ばおりでそばを食べようとする光邦と崇の芸を可愛いと言う女性達。舞いを披露したまでは良いが、そこから自画自賛を始めた竜胆。そんな皆を見ながらハルヒは慣れを感じていた。それは最早悟りの心境だった。それを見て可愛いと言う女性達がいる事にハルヒは気付いていなかった。

「ハルヒ!伏せろ!」

突然飛び込んできた環のせいで土にまみれるハルヒは地面に伏したまま溜め息を零した。

「光!このバカ!危うくハルヒの命の灯火が消えかけたぞ!」

「殿がちゃんと受け止めないのが悪いんじゃん」

「蹴鞠も満足にできないなんて桜蘭の光源氏の名が泣くネ」

双子の挑発も変わらぬまま。それにまんまと乗ってしまう環も今となっては見慣れたものだった。そして環が蹴った鞠は飛びに飛んでどこかのガラスを割る音。外からその方向を見上げればそれは新聞部の部室だった。

「すいません!誠に申し訳ありませんでした!」

「ハルヒちゃん、掃除機持ってきた」

環が謝る中きちんと割れた窓ガラスの片付け。

「いえいえそんな…たかが窓ガラスが割れて鞠が頭に直撃しただけですから。しかし丁度良かった。実はホスト部に取材協力願えないかと思っていた所でしてね」

新聞部の存在に初めて気がつくハルヒ。それもそのはずだった。新聞部が作る新聞は校内恋愛事情やら家同士の権力抗争によるクラス内分裂等過剰にあおりまくったゴシップ紙。捏造が過ぎるそれを誰が読むだろうか。

「確かに…我々は注目を集めたいばかりに真実を見失っていました。しかし廃部にまで追い込まれてようやく目が覚めたのです。どうか我々に力をお貸し下さい!春の特集はぜひ“密着!ホスト部24時!”で皆様の魅力の真実を!」

それに感動したのは環だけだった。環は最近日本の警視庁24時にハマっていたらしい。受けようとした瞬間、それを鏡夜が止めた。

「鏡夜!おまえはあの番組の感動を知らないから!第一俺のせいで彼は怪我を――…」

「生憎ですがうちの情報公開はお客様限定とさせて頂いております」

「治療費は出すからさ」

「今まで散々でたらめ書いてたとこに協力して僕らにメリットあるとも思えないし?」

「「僕ら他人にメーワクかける奴ってダメなんだよね――」」

自分を省みない二人にハルヒは性格最悪だ、と心の中で思っていた。

「私も反対よー!私の女装はホスト部に来ないと見れないっていうのが基本なんだからっ!」

いやいや、貴女平気で女装のまま廊下歩いてましたし、ハロウィンの時だって…。どうも自分のやっている事はこの際関係ないらしい、ハルヒは再び悟るのであった。


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