35 (1 / 3)



季節は早いもので二月になった。そして二月と言えば乙女の祭典がやってくる。意中の殿方へ何の贈り物をしようか、それは周りの女子達だけでは無く、男子までも何か貰えないかとそわそわとし始めている、学園内が浮かれているような雰囲気だった。そしてそれを誰よりも心待ちにしている人物がホスト部には居た。

「ハニー君☆今年はどんなチョコレートを御所望かしら?ムース?ボンボン?リボンは何色がお好み?」

「どれでも幸せ☆チョコもみんなも大好きだもんっ☆」

そんな愛らしい光邦を見れば女子達は黄色い声をあげる。三年生にあるまじきラブリーさで無敵を誇る光邦は近付くバレンタインに期待を隠せない。

「すさまじくごきげんですね、ハニー先輩」

チョコや甘い物は四六時中食べているというのにも関わらず光邦はにこにこにこにこ…。男にとってバレンタインがいかに大事がを力説する環もハルヒからのチョコを待ち望んでいる一人だったが、いい加減学んで欲しい。

「え…ハルちゃんからおとーさんにチョコはないのかな――…」

「そうか、用意しなきゃ。実の父に一つ」

そうして毎度おなじみとなり、環は壁際で重い影を背負い落ち込むのだ。

「アホだねー殿も…ハルヒがバレンタインって柄かよ」

「殿のがよっぽど乙女だよな」

「今までのストーリー展開から“ハルヒが環にチョコを渡す”と導き出せた図々しさは買うがな」

「もう、そこの追い討ちトリオ。あんまり環をいじめてあげないで」

竜胆は小さな溜め息を吐きながら呟いた。隙あらば環をからかう事しかしないんだから。

「竜胆ねぇ」

「今年の義理チョコは何〜?」

「考え中。でも失礼だよ。義理じゃない。自分はちゃんと全てに愛情を込めてます。でもそれよりも自分が貰える方が楽しみで」

光邦同様竜胆もかなりの甘い物好き。普段は美容面を考え食べる量こそ控えているが、この日ばかりはついつい緩んでしまう気持ち。そのせいか竜胆も二月に入ってから女装をするのはやめていた。

「ハニー先輩、まだケーキ食べてるんですか?虫歯になりますよ?」

「大丈夫だもん!ちゃんと歯磨きしてるもーん!」

光邦は動きを止めた。首を傾げるも大方理由は分かってしまう。ムリヤリ口を開かせようとするも光邦はそれを拒否した。それが肯定している。

「モリ先輩!早く!ハニー先輩が!」

当然光邦が虫歯になったのはその場にいた誰もが分かる事で、崇は強制的に光邦の口を開き、虫歯を確認する。そして目で環に合図。

「……環…」

何も言わずとも環には伝わり、命令を下す。

「ああ…はい、わかりました。ハニー先輩は虫歯が治るまで甘いものは禁止。なお部全体での協力態勢として今年のバレンタインは全面的に自粛とする!」


[prev] [next]
[bkm] [TOP]
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -