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「今年のハロウィンはどんな格好にしようかな。二人は決めた?」

「決めてないな」

「俺はもう決めたぞ!この美貌を生かしたヴァンパイアにしよう思っている!どうだろう、似合うだろうか?」

「環ならお似合い。それよりも今年は先に光と馨の対策を考えたら?」

去年のハロウィンでの光と馨はひどいものだった。餌食は主に環だけだったが、お菓子を持っていなかった環は散々してやられたのだ。それを思い出せば飴を買占め、ハルヒにも被害が行かぬように渡しておこうと意気込んでいた。それを見て竜胆は懐かしく思っていた。あの光と馨が他人と話すようになったのは良い事だ。きっかけは環のお陰なのだろう。そして今年は面白いハロウィンになれば良いなと思う。

「ねぇ、鏡夜。鏡夜は神父様なんてどう?似合うんじゃないかしら?黒神父」

「“黒”神父とはどういう意味だ。まぁ、手頃で良いだろうな。で、竜胆はもう決めたのか?」

「ふふふ…今年はね良い事思いついた。先日のロベリアの件で学んだんだ」

「男役か?娘役か?どちらにしろ普段から大して変わり無いのだからつまらないな」

違うから!竜胆は軽く頬を膨らましてから鏡夜をビシッと指さした。

「環の言っていた言葉よ。“一粒で二度美味しい”今年はそれ!楽しみにしててよ、鏡夜」

竜胆は笑いながら席を立ち教室を出る前までも色んな人達に話しかけられていた。女子生徒、男子生徒。そうして竜胆と話している者は皆笑顔を浮かべていた。あれが牡丹と間違える?バカな発想だな、それは。ようやく人ごみから脱して教室から出て行く竜胆の背を鏡夜は見送った。
そしてハロウィン当日、試験も終わり採点期間の為にこの日だけは仮装を許される日。竜胆は身に纏った衣装のまま校内をぶらついていた。この格好ならば誰も声をかけてくる人間はいないだろう。後で種明かしでもしてやろうそんな企みだった。ハルヒが呪いにかかったという噂は聞こえたが、そもそも呪いとはなんの事だと竜胆は気にしなかった。当然ハルヒもその類だ。クラスの窓ガラスが割れたり、ハルヒだけ魔女の姿を見つけたり。時計が半端な時間に鳴り出したり、近くに居た馨が怪我したり。流石に怪我をしたと聞けば竜胆も動き出した。

「ふーん。馨が怪我をしたって聞いたから飛んできたら自作自演?」

全く怪我をしていないくせにどうやって包帯を巻こうか悪戦苦闘している馨の姿。竜胆は小さく溜め息を吐きながら変装を軽く解いた。


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