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「ホントの事ばっか言って火に油そそいでどーすんだよ!」
「事実は事実。それはそれだ」
「嘘でもついたら尚更ハルヒちゃんは怒るでしょうが」
「やっぱしシャーペン売っちゃったのはダメだったよねえ…」
「お母さんの形見だったのかもな…」
「イヤでも思いっきり電器屋の名前印刷されてたぞ」
皆の思考はマイナスになり、ハルヒが本当に桜蘭を辞めてしまうのでは?そんな思考に陥ってしまう。が、竜胆は一人けろりとした顔だった。
「皆の衆…考えてもみろ。ハルヒは基本的に無頓着とはいえどちらかというと男物の服装を好む傾向がある。加えていつだったかこんな事も言っていた。“女の子に騒がれるのも悪い気がしない”“どうもそっちの気があるみたいだ”と…何故今まで気付かなかったんだろうな…あいつはひょっとしたらホスト部よりも…ヅカ部の方が性に合っているんじゃないのか…?」
――いえてる。そう納得する皆の中で竜胆はこらえきれなくなった笑いが小さく零れてきていた。
「うわああん!ハルちゃんが転校しちゃうよ〜」
「どーすんのさ!ハルヒの頭ならロベリアの奨学試験くらいパスしちゃうよ!」
「ロベリアなら800万の借金をたてかえるくらいはしそうだしな」
「落ち着け皆の衆、俺の話を聞け!俺に秘訣がある!」
「あはははっ!」
その秘策を聞いて竜胆はついにこらえきれなかった笑いと笑いすぎて涙を零す。
「ちょ、こんな一大事に」
「竜胆ねぇは何爆笑してんのサ!」
君達は考えた事があるのだろうか。彼女がどうして奨学金を受けてまで桜蘭に来た事を。価値観の合わないクラスメイト、借金を背負って、ホスト部に強制的に入れられて、パシリにされて、イジメられて、それでも桜蘭にいる彼女が本当に入れればどこでも良かった、なんて思っているのだろうか。ハルヒの学力ならどこでも奨学金を受けて入れる。それこそ学費が安くてもシステムが整っている公立校に行けば良いだろうに。それでも彼女がここにいる理由を――…。
「何でもないわよっ。それよりもその化粧は全て私に担当させて頂戴な。久々に腕がなるわね!」
竜胆は微笑んだ。そして次の日。ハルヒは部室の前でロベリアの三人が来るのを待っていた。ハルヒは今朝光と馨にそう言われていたのだ。そしていつもの様に第三音楽室の扉を開くとそこはヅカ部もどきでした。
「いらっしゃいませ」
目の前の光景にハルヒとロベリアの三人は固まってしまった。なんせ今日はヅカ部仕様美しい男役と娘役。当然化粧にも抜かりない。むしろ化粧に力が入っているのは竜胆のお陰。
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