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そしてハルヒは近くの部屋のトイレに駆け込んで行った。その後ろ姿を皆は見送った後、猫澤の正体を迫る会活動を始める為に出て行った。ハルヒの背をさすっていたが、水を用意しようとトイレから出て来た竜胆。

「鏡夜の部屋だったのね」

「…いい迷惑だな」

シャワー上がり、上半身裸の鏡夜はタオルで髪を拭きながらシャワールームから出て来た。

「ハルヒちゃん、具合悪いの。大目に見てやって」

鏡夜はスタスタと歩きながら竜胆の右腕を掴み上げた。

「痛いのだけど」

「赤くなってる。お前…ずっと隠してたな?」

隠す?ハルヒの背を撫でる為にまくって袖から出て来たのは赤くなっている手首だった。

「大丈夫よ、これくらい。すぐに治るわ」

「……お前等は一体何を考えているんだか」

鏡夜は溜め息を吐いた。竜胆にしろハルヒにしろ“女性”という自覚が足らない。

「言っておくけど、“私”は止めたわよ。これは不可抗力。それよりもあんまりハルヒちゃんを怒らないであげて欲しいの、お願い」

「俺がハルヒを?そんなことをするのは環だけで充分だろう?父親はあいつなんだからな」

「あら?私にはお母さんも怒っている様に見えるわよ」

鏡夜の言葉に竜胆は小さく微笑んだ。鏡夜も変わったのね。良い方向に変わって来ているのね。家柄にしか興味の無かった鏡夜が一人の女の子の為に心配し、怒っている。それは寂しいけれど。良い変化ならば認めなきゃいけないから。

「なら、お仕置きでもしようか?」

「は?――…っ…」

鏡夜に掴まれていた右腕。それが鏡夜の口元に持って行かれれば、赤い印がついた。

「…鏡夜、何考えてるの」

「別に」

赤の他人に付けられた傷を見せられたくはない。それならば自分で付けた方が幾分マシ。優越感。独占欲。

「…はぁ。もういいわ。じゃあ、ハルヒちゃんにお水渡してあげてね」

竜胆は服の袖をギリギリまで落として手首が見えないように隠した。確認の為にもう一度袖をまくりあげて見るとそこは掴まれた赤よりも鏡夜がつけた赤の方がはっきりと色濃く出ていた。

「…バカじゃないの」

まるでキスマークみたいじゃない。竜胆は小さく呟いてから皆を探した。




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