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「ハルヒ!竜胆!」
環の声が聞こえた瞬間そちらを振り返った。環と竜胆の目が合うと竜胆は小さく頷いて、それを受け取った環は真っ直ぐハルヒへ駆け出した。
「ガキはおとなしく海水浴でもしてろっつーの!」
ハルヒは殴られそのまま崖の下へ落ちていく。
「ハルヒ!」
それを追いかける環の姿があった。
「…その手を放しなさい。無礼者」
竜胆は目の前の男を睨みつけた。
「は?」
「あんたに何があるの?知性も品性の欠片も無い。顔もスタイルも家柄、地位、名誉、財産。全部揃えてきてから出直しなさい」
「てめっ!」
「その辺にしてもらおうか」
殴りかかろうとした男の腕を掴んだその手。その持ち主を見て竜胆はほっと息を吐いた。それから光馨に光邦、崇までが揃えばもう安心だった。絡んできた男達に身分証を差し出してもらって帰した。当然桜蘭の生徒を敵にしたのだからこれで済むはずがないが。竜胆はその場にへたりこんだ。そこに差し出す手。
「遅いのよ、バカ鏡夜」
「はいはい、俺はバカらしい」
その手をしっかりと握って竜胆は立ち上がった。環とハルヒの存在を海に見つけ猫ヶ岩を下り慌てて近寄った。
「ハルちゃん!」
「殿!」
環はしっかりとハルヒを抱きかかえていた。苦しそうに息をするハルヒはなんとか無事らしいが、その綺麗な顔は殴られて血が滴っていた。
「…あいつらは?」
「身分証を預かって丁重にお帰り頂いたよ」
「そうか。鏡夜、光と馨もお客様をホテルにお送りする手配を。ハニー先輩は猫澤先輩に医者呼んでもらって」
そう言う環の声はいつも以上に落ち着いていた。そう、彼は今本気で怒って居た。崇にハルヒを抱えてもらってから環は竜胆を見た。
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