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「猫ヶ岩は猫澤家の守り神が代々祀られている所で…あそこから飛び込めば二度と上がってこれないという神秘的な伝説もありまして…おや?」
それは神秘的なのだろうか、恐怖的の間違いだろうと竜胆は首を傾げた。
「あそこに勇気ある挑戦者が…」
岩の先に居たのはハルヒだった。環と光馨は慌ててハルヒのもとへと向かった。
「りんちゃーん!ひおしがりする〜?あ、ハルちゃんも一緒にどう〜?」
救出されたハルヒは砂浜を歩いて潮干狩りという言葉に近寄った。時期ではないが何が取れるのか、そう思いながら辺りを見れば散らばった魚介達。それは明らかに撒いた物だったがそれでも魚介は嬉しいとハルヒはスコップとバケツを握った。
「竜胆先輩。ここウニいっぱい取れますよ?一緒にどうですか?」
ハルヒの誘いに竜胆は少し驚いた。ハルヒは自分と一線引いているような気がしていたからだ。竜胆は日傘を肩にかけてハルヒの隣にしゃがみこんだ。
「ウニは何で食べるのが好き?」
「…あんまり食べる機会がないので…イメージとしては軍艦巻きですかね?」
「そのまま食べても美味しいよ。炊き立てのご飯に乗せても良いし。それとも貝類が多いから皆纏めて網焼きでもいいね」
「はい、美味しそうで楽しみです」
ハルヒはにっこりと微笑んだ。それに答えるように竜胆も笑みを浮かべる。それを遠くから見て微笑ましい光景だと涙を流す面々が居る事に気付かない二人だった。
「ほら、ハルヒ。でっかいホタテ。ホタテ好き?」
「すき、ありがと馨ー」
その笑顔を見れば皆がハルヒの笑顔見たさで集まってきた。
「ハルヒ!サザエだ!好きか?」
「ほらほらルーム貝!好きか?」
ごちゃごちゃにされてバランスを崩した竜胆は砂浜にぽすんと座り込んだ。
「どーだハルヒ!でっかいカニさんだー!カニは好きかに〜?」
環が掴み上げたカニからはムカデが顔を出した。それに驚く女性達は悲鳴をあげて離れて行ったが、ハルヒはそれを掴み上げ遠くへ投げた。
「オマエ…100歩譲って虫好きの心優しい少女だったとしてもさあ…」
「せめて草の上に放してやるとかないワケ?」
ハルヒはけろっとしていた。虫が怖い女の子から守る、という儚い夢を抱いていた三人の夢は脆くも崩れ去り、双子の頭によからぬ案が浮かぶ。
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