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海に行けばそこは邪魔する者もいない綺麗な海。プライベートビーチで身内同士。そして今回はハルヒを拉致する必要もないのだから、皆楽しく、思い思いに過ごせると思っていたのだ。ここに来るまでは。

「綺麗ね…環くんと二人で海を見れるなんて夢みたい…」

「夢じゃないさ…だけど願わくば今夜貴女の夢に僕が現れますように…」

そんな光景を見てハルヒは溜め息を吐いた。少し離れた所で光と馨のいつもの兄弟愛。本日は出張ホスト部だったのだ。

「あれ、竜胆先輩は遊んだりしないんですか?」

一人パラソルの下にいる竜胆はミネラルウォーターを片手に空を見上げていた。

「ハルヒちゃん。実を言うとね自分日差しに弱くて」

「日焼けですか?」

この人は美容にかなり気を使っているようだし。それに自分達は水着も着れないから彼らよりは楽しみ半減かもしれない。

「それもある。日焼けすると痛くなるタイプだし。だけど、それだけじゃないんだ。熱中症になり易いタイプって言うのかな」

ほら、日傘もあるし。と竜胆は手元の傘を持ち上げる。竜胆は暑そうに被っていた帽子を取りそれを使って自分を扇いでいた。

「じゃあ、何で海に来たんですか?」

「えぇー仲間外れは嫌いだし、何より楽しそうじゃん。ほら、ハルヒちゃんも行っておいで。君を待ってる子達と話しておいでよ」

竜胆はひらひらと手を振った。そしてハルヒが歩いてすぐに振り返ると竜胆は休憩しに来た女の子達と楽しそうに喋っていた。さっきの徹底振り…。もしかして竜胆先輩は体が弱いんだろうか…?

「あら、確かに日焼けはお肌の大敵…ちょ、間違った。今の格好で言葉遣い間違えた。恥ずかしいからターイム!」

いや、それもあの人の冗談の様に思えなくも無い。なんともつかみ所が無い人だと思った。

「竜胆ねぇージュース取ってー」

「はいはい。馨もいるでしょう?」

「うん、ありがとうー」

日傘片手に竜胆はトレーに乗せたジュースを二人に渡す為砂浜を歩いていた。そして歩く度に近付いてくる奇妙な形の岩。

「なんでカリブ海じゃなくて日本海でその上」

「皆様お楽しみですか〜…」

「「猫澤先輩のプライベートビーチなワケ」」

そこに居たのは猫澤梅人だった。黒いローブの上から真っ黒な日傘をさしていた。

「おや…柊君も日光は苦手ですか〜…仲間ですねぇ」

「あはは、猫澤先輩とは理由が違いますよ」

暢気に笑う竜胆を他所に環は猫澤の存在に焦り鏡夜に詰め寄った。

「鏡夜!俺はおまえのビーチを貸せと!」

「生憎父の客人が使用中でね。急な計画の上ハルヒは国内近場希望。パスポートもなし。他に適した場所を提供できた者は?」

プライベートビーチを持っているのは鏡夜、環、光馨、そして竜胆だったが、生憎国内で持っているのは鏡夜だけだったのだ。


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