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嗣郎が言っていた“時間がない”という事はどういう事なのだろうか。それが気になったホスト部の面々は初等部まで足を運んでいた。潜入しやすいのは誰だろう、となった時光邦とハルヒの名前が挙がった。初等部仕様と光邦と中等部女子生徒仕様ウィッグ装着済みのハルヒを遠くから見ていた。

――かぁわい〜!おにんぎょさんだーミニスカートだぁ〜

ただ単にハルヒの女の子の格好が見たかっただけでしょうが。それを今更彼らに言った所で何も変わらない事を知っているので竜胆はあえてそれを口にしなかった。そして嗣郎のクラスである5−Aまでやってきたが、そこには誰の姿も無かった。

「なつかしーなーこの教室だったんだヨ」

「ほー。俺と竜胆は中等部からだから新鮮だな」

「そうね。初等部の椅子と机はこんなに小さいのね」

変装している二人を他所にぞろぞろと通常通り教室に入ってくるホスト部メンバーに文句でも言いたいハルヒだが、人影を発見しそれをなんとかこらえた。

「ちょっと人が来ますよ!こらっ、お口にチャック!」

可愛らしいハルヒにドギマギするメンバーとお口にチャックなんて可愛い言い方、なんて暢気に微笑む竜胆。教員を見送ってから皆に着いて来るなと言ったハルヒは光邦を連れて嗣郎を探した。そして見つけた場所は音楽室。必修クラブの時間。嗣郎は一人の女の子と喋っていたが、女の子は少し寂しそうな顔をしてすぐにピアノを弾き始め、その姿を見ているだけの嗣郎。それを見れば一目瞭然。

「もし…そこのお嬢さん。あそこでピアノを弾いてる彼女の事でちょっと…」

環は初等部の女の子相手でも常に全力だった。

「神城雛ちゃん?あのねもうじきひっこしちゃうの。お父さんのお仕事でねえ来週いっぱいでドイツにー…」

その話を聞いている途中に嗣郎がこちらに気付き廊下まで出て来た。そんな嗣郎の話を聞く前に環は嗣郎を抱え上げて強制連行。嗣郎が喜ばせたいのは女の子と言ってもたった一人の女の子。そして出来る事は彼女と一緒にピアノを弾かせてあげる事。環は得意のピアノを嗣郎に徹底的に叩き込んだ。一週間後、

「いらっしゃいお姫様」

小さなお姫様に招待状を送った。普段ならホストを務める面々も本日ばかりは脇役、エスコートのみ。

「本日のメイン。鷹凰子嗣郎のピアノにございます」

グランドピアノを並べて嗣郎と小さなお姫様は一緒にシューベルトを奏でる。

「それじゃドイツの彼女とは毎日メール交換を?」

「うん、まーね。けどあいつ意外とヤキモチやきなの。だからこんなキレーなお姉さん達と仲良くしてるなんてヒミツな?」

「「やーん!かわい〜!」」

「女にモテんのなんて簡単だね。あんたホントにキング?」

そんなオチがついてしまったけれど、環の行動力と観察力は人を幸せに出来る。そう思ったのは竜胆と…誰か?




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