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「おまえなんかこうして…」

「いい加減に…しろっ!」

ハルヒは大声を出して光と馨の頭を一発づつ叩いた。

「ただの喧嘩にこーいう物持ち込むんじゃないっ!二人とも悪いし周りに迷惑かけるのはもっと悪いよ!」

殴られた光と馨はぽかんと呆然していたが、ハルヒのお説教は続く。

「ちゃんとごめんなさいしな!今すぐ仲直りしないと一生うちになんか来させないからねっ!」

まるで小学生を叱る様な言葉だった。そうして光と馨はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

「ふうん…」

「じゃあ…」

「「仲直りしたら行っていいわけ?」」

その手には台本。呪い人形にはハズレの文字。それを見れば今度は周りが呆然とする番だった。

「ごめんよ馨…!台本通りとはいえ、あんなひどい事言うなんて…!」

「そんな…!僕こそ光に怪我でもさせたらどうしおうって…!」

いちゃいちゃする二人を他所に呆然としていたメンバーは項垂れた。ただの暇つぶしに付き合わされただけ。だが、竜胆は眉間に皺を寄せたまま光と馨に近付いた。

「「竜胆ねぇ」」

「何怖い顔して」

「いつもの僕らの暇潰しだヨ?」

「…私が何に怒っているのかは分かっているわね…?」

男装のままだと言うのに言葉使いは素の竜胆のまま。

「喧嘩するの結構。暇潰しするの結構。周りに迷惑をかけたのもまぁ許してあげる。それでも私はあの言葉だけは冗談でも演技でも言ってほしくない」

双子だから間違われてうんざりして大嫌い?バカ。これは自慢出来る要素だと言うのに。嘘でも嫌いなんて言葉は嫌。そこに深い理由なんてない。ただ悲しいだけ。竜胆は切なげに微笑んでから光と馨の額を軽く小突いた。小突いた後光と馨を抱きしめた。

「私は光と馨が大好きよ。二人セットで言っているんじゃなくて、二人は一緒に居て欲しいの」

だって私の相方は今や遠い地。

「「…竜胆ねぇ」」

ごめんね、左右の耳が同時に同じ言葉を拾い、竜胆は抱きしめる腕に更に力を込めた。

「「はーい!久々の“どっちが光くんでしょうか”ゲーム!」」

「はいっ!ピンク頭が光くん☆仲直りしてもしばらく色はそのままなのね☆」

「「大当たり〜」」

「あれ?交換したの?――…だから、今日はピンクが馨なの?」

――“僕ら”と“僕ら以外”だった彼らの世界に思わぬ侵入者到来か?竜胆は光と馨にとっての自分のポジションをしっかりと理解していた。きっと同族意識。双子だから分かる。親戚だから、小さい頃から一緒だったから。だからこそ別の、自分以外の誰かの存在を待っていた。世界の広さを教えてくれる誰かを。

「二人が行く世界に幸多からん事を」

きっとそれはハルヒちゃんが教えてくれる。それを竜胆は今日の事で確信した。二人と、そしてハルヒを見る竜胆の目はとても優しかった。




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