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その言葉を聞いて竜胆は首を傾げた。そうだったかしら。確かに光と馨に海外へ手術を受ける事は言えなかった。だって助かるか分からない様なもの。子供に酷な事は聞かせられないし、そもそも自分も言われてなかった。帰ってきてもしばらくは手術の事は言えなかったし…。鏡夜に好きだともだいぶ言ってなかったわね…。

「…きっと私も鏡夜も言葉が足りないのよねぇ」

竜胆はそう言うと立ち上がった。

「「頑張れ!僕ら応援してるから!」」

双子の声援を受けて竜胆は共有フロアを通り抜けて鏡夜の部屋の扉をノックした。こっちからノックすれば相手は竜胆だと言う事がすぐに分かるだろう。ノックをしても返事がない。竜胆は答えも聞かずにその扉を開いた。

「え?何不貞寝――!?可愛い所もあるのねぇ!?」

「…不法侵入してきて何アホな事言ってんだ、お前は」

だってベッドに寝転んでいたらそう思うでしょう?と竜胆は笑顔のまま鏡夜のベッドの端に座り込んだ。そして正面の壁を見ながら小さく呟く。

「…私が悪かったわ。…私はただ鏡夜の言葉が欲しかっただけなの」

「…言葉?」

「…私達ってお互い気付いちゃう事が多いでしょう?だから、聞きたかったのよ」

「何を?」

鏡夜は体を起こして竜胆の方を見たが、竜胆が鏡夜を見る事はない。

「…妬かせてごめん、とか。少しは妬いた?とか。心配した?とか心配かけてごめんとか、そういうの…何でも良いから聞きたかったのよ。戻ってくる時鏡夜は謝ったけれど、傍から聞いたら何に対して謝ったか分からないじゃないの…」

そう言う竜胆を鏡夜は後ろから抱きしめた。

「…悪い。言葉にするのが苦手、らしいな、俺は」

「営業が関わってないと本当に駄目ね。でも、それが本当の鏡夜なのよね」

竜胆は鏡夜の腕に自分の手を乗せた。そして振り返る。

「…ねぇ、今だけで良いから教えて?貴方の気持ち」

「…好きだよ、竜胆」

その顔と言葉でもう充分よ。でもね、謝るならもう少し早くに謝って欲しかったし、抱きしめるのも、好きだと言うのももっと早くにして欲しかった。じゃないと普通の女の子なら泣いている所よ?そう言うと鏡夜は小さく笑った。

「…そういうお前だから、俺は竜胆を選んだんだろうな」

「そういう鏡夜の可愛い所、本当に好きよ」

二人は笑い合った後唇を合わせた。そうキスももっと早い方が良かったわね、今度から早くして頂戴ね?気がむいたらな。照れ屋ね。お前もな。なんて二人はまた笑みを浮かべる。それが二人の日常会話。




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