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「お父さんにわかってもらえてよかったね〜」
「つっても5年以内に何らかの結果を出すって条件つきだけどねー」
奈々子は辺りをキョロキョロと見回した。一番にお礼を言いたいのは鏡夜だったからだ。
「鏡夜なら親父さんの部屋に呼ばれてますよ」
「…ひどく叱られたりとか…」
「…まさか。俺はむしろ逆だと思いますよ。…鏡夜が家に縛られているって話ですが、見かたによってはある意味正しいのかもしれません。あいつは恐ろしい程負けず嫌いで野心家ですからね」
「いつだって目指すのは最善であり、頂点だもの」
――まだまだあの人にはかなわない。
「そして幸か不幸かあいつの場合、“家の中”に最大の敵がいるんですよ」
――しかし面白い。魂の自由は自分だけが知っている。
「そーだ、前から薄々と考えてはいたんだけどさ、今回ちょっと決めた事があってさ」
「僕ら桜蘭の大学部には行かないわ」
「「美術系の学部のあるとこ行こうと思ってさ」」
「へえ…ヒカちゃんとカオちゃんらしいね」
――どこにでも行ける。ここにとどまる自由もある。それぞれにそれぞれの色があって、今こうして混ざり合って思いがけない色を生み出してる事も
「待たせたな、行くか」
「ハイ、お土産☆サグラダ・ファミリアの特大オブジェ☆私が昨晩ねんどで作ったの」
「これはこれはもっともいらない物を」
――きっと褪せない記憶になる。
この空もいつか思い出す。皆で見た大事な記憶はいつまでも自分達の中にあるだろう。
「竜胆」
「…なぁに?」
「……悪かったな」
その顔も。私の中では大事な思い出の一つになる。
終
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