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「俺に鳳家の三男としての立場があるように、あなたにも荘司家の長女としての立場がある。お互いそこからはどうあっても逃れる事はできないんですよ。俺が気に入らないのはあなたのその甘えた思考だ。逃げ回っていれば解決するなどと思うな。本気でやりたい事があるならきっちり筋を通せ。あなたに父親や家を思う気持ちが少しでもあるのなら、荘司家長女としての誇りだけは見失うな…!」

竜胆はその言葉を言う鏡夜の顔を見た。そして優しく微笑む。あぁ、そういう顔も久しぶりで良いかもしれないと。

「…戻るわ、車は帰してちょうだい」

もう大丈夫だ。この人はたった今本気を見つけたのだから。

「奈々子…!今までどこに…この騒ぎはおまえが原因か!!おまえは何という事を――…」

「お父さん、お願いします。私どうしても進みたい道があるの。お役に立てなくて本当にごめんなさい。でも約束します。決して家の恥になるような生き方はしない。お父さんが初めてこの国につれてきてくれた時から抱き始めた夢を」

奈々子は父親に向かって頭を下げた。

「どうしても叶えたいんです。お願いします――…」

「「ハルヒー竜胆ねぇーカルメンさんが…」」

準備を終えた皆はなかなか部屋から出て来ないハルヒの部屋まで来ていた。そこには同室の竜胆と先ほど顔を出した環の姿。光達の後ろには鏡夜の姿はない。

「ホントに世話になっちゃって…色々ありがとね。はい、私と父からお土産☆」

生ハムやお菓子がたくさん入った紙袋を竜胆は受け取った。そして奈々子は竜胆に近付き耳元で言うのだ。

「…誰も取ったりしないわよ、感動はしたけれどね」

「…えぇ、自慢の彼氏ですから?あげたりしませんけどね」

そこでも不敵な笑み合戦だったが。


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