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「鏡夜。本こっちにあったわよ」
「あぁ、ありがとう」
「えっと、私のビジューのカチューシャどこにあるか知らない?持って行きたいのだけれど、見つからないのよねぇ」
「俺の部屋の洗面台にあっただろ」
「え?本当に?気付かなかったわ、ありがとう」
付き合ってしばらく経ったカップルの様な、夫婦の様な会話をドキドキとしながらその光景を見ていたホスト部の面々は鏡夜の言葉に驚いた。
「え?スペイン?」
「そう、スペインだ。ちょうど感謝祭と週末で3連休だろう。ちょっと行ってくる」
「「ちょっとって鏡夜せんぱ…」」
ボストンに来てから3ヶ月と少し経った時。11月下旬の週末の事でした。
「父親からの呼び出しだ。会わせたい女性がいるんだと」
その言葉に皆は顔を赤くして驚くものの、その視線を一気に竜胆へ向けた。が、竜胆はそれに気付かずに荷造りの最中。
「ん?どうかしたの、皆」
未だ男装中の彼女はハルヒと違って髪を伸ばせないが、それでも女の子らしくなったのは彼氏が出来たせいかもしれない。そして彼らはスペインがバルセロナに来ていました。
「これがサグラダ・ファミリア…!」
「わぁ凄い!」
その大きさと未だ建設中なそれは見る度に形が変わっていて、何度見ても別の感動がある。今見ているサグラダ・ファミリアは本当に今しか見えないと思うと更に感動だ。
「前に来た時よりあの辺が増えてるかねえ?崇」
「ああ…」
「光光!塔の内部登っとく?」
「もっちろんでしょ☆」
「私も行きたい〜!久々に見る〜」
竜胆は目を輝かせた。
「皆は初めてじゃないんだ?」
「僕と崇は家族旅行と学校の研修旅行でね〜3回目」
「「僕らはこれで5回…いや6回目かな?」」
「そんなに?」
「「何を隠そう、僕ら二人…スペイン大好きッス…!!」」
そしてムダな抱擁。そこにどんな意味があるのだろうか。慣れっこの皆はそれを平気でスルー。
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