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《皆様、お手元のマスクを顔に――…更に明かりをほんの少し落としてしまえば皆様はもうお互いが誰かも不確かです。…その中で見つけて欲しいのです。この桜蘭で成長し、自ら羽ばたいていく。“藤岡ハルヒ”の本当の姿を――題しまして“ハルヒくんを探せ”ゲ―――ム!》

環の声が響き渡った。そして皆は準備室から出て行くハルヒの背を押す。

「ハルちゃんかわいいよ☆がんばって!」

「ハルヒ」

「私の代わりにもよろしくね、ハルヒちゃん」

「ハルヒ」

「「ハルヒ!!行ってこい!」」

これは賭けだった。そして賭けるものはハルヒが彼女達と積み上げてきた絆。

「ねえ…あれ…ほら、やっぱり。見つけたわよ、ハルヒくん。そのドレスとってもお似合いだわ☆」

「皆…」

「私達知ってましたわ、ハルヒくんが実はそういう格好がとっても似合うだろうって事も。それから環様との事もね☆」

ハルヒの事実に誰も驚く事はなかった。環との事も。それを受け入れていた。やっぱり桜蘭って素晴らしいわ。竜胆はそれを聞いて牡丹の言葉を思い出していた。

「…ハルヒくん、寂しくなりますけど、きっと帰ってきてね――…ホスト部とこの桜蘭に帰ってきてね」

その言葉を聞いてハルヒは涙を零しながら喜んだ。そして環とハルヒがワルツを踊っている。その光景を上から見ていて思う。

「大成功ってとこかな?よかったねえ〜」

「そうですね、幸せそうです」

「ええ…まあ一番よかったのは女と知れてもハルヒの人気に影響がなさそうなところですかね。ボストンに行っても毎日会員制のブログを更新させて――…」

貴方もあいかわらずね、竜胆は小さく微笑んだ。

「…少しばかりハルヒちゃんが羨ましいわ」

「りんちゃん…」

でも私もいつか言うだろう。皆の前で少しばかりのお詫びを。

『柊牡丹は高等部を卒業と共に海外で役者の道を目指します。皆さん、応援して下さると嬉しいです。そしていつか僕の妹である柊竜胆にお会いした時、声をかけてあげて下さい。柊でも、牡丹の妹でもなく、竜胆と呼んであげて下さい――…』




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