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「そろそろ来ると思っていたよ」

迎え入れた譲氏の第一声はそれだった。譲氏の顔は疲れた顔。それもそのはずだ。環の為を思ってした事のはずが理解を得られなかったのだから。だって、それは環の為じゃないのだから。

「…環が口を聞いてくれなくて。君達からも話してやってくれないか。今回の件はあくまで社全体の意志だ。それに…全ては環の為でもあったのに――…」

「ふざけないでよ……」

竜胆は小さく声を発した。

「何が環の為よっ!…結局は自分の為じゃない!環の為?…そうやって逃げてるのは貴方じゃない…貴方は結局自分を守りたかっただけだわっ…」

竜胆は唇を噛み締めた。そんな竜胆の手を鏡夜は後ろ手で掴んだ。

「竜胆の言う通り、あなた自身の為でもあった。何故ならあなたこそ誰より長く会長の抑圧され続けていたからです」

「…鳳家の三男という立場の君にはわかるのかもしれないね」

三男とかなんなのよ、もう。竜胆はきつく鏡夜の手を握り返した。

「そう…私は長年母の言いなりだった。互いに愛のない結婚を強いられ、妻が外に愛人を作っても見て見ぬフリをした。しかし初めて愛する人と出会い、私は目が覚める思いだった。前妻とは離縁できたが、その後も母は私には勿論アンヌや環にさえも圧力をかけ続けた。その辺りは君達も知るところだろう。やっと実力で母を抜ける時が来たんだ。環が喜んでくれると思っていたのに――…」

その言葉を聞いて苛立ちを隠せなくなった光と馨は前へ飛び出した。

「ふざけんな!殿をあんだけ傷つけといて!」

「そうだよ、そりゃ理事長も大変だったかもしれないけど――…」

それを鏡夜は手を出し、冷静に止める。

「よせ、まだ話は終わっていない。高坂弁護士を泳がせていたのは彼女がハルヒの両親に…特に父親と面識があると知っての事ですか?」

「…そうだ」

ハルヒはその言葉に驚いた。


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