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「春だねえ皆の衆!さて春といえば?」

「「進級――!」」

光と馨の言葉に環は慌てて二人をぐるぐる巻きの簀巻きにしてから喋らないように口には×印のマスクを施した。そう、この桜蘭ホスト部は進級知らずで活動しています。そして本日は満開の桜の下よりお送りしています。英国ウェイタースタイルの環、鏡夜に光馨。対する残りのメンバーは和装になっていた。竜胆は水上茶室から少し離れた所から水面を覗き込んでいる。

「桜が流れるこの風景は美しいね」

「えぇ…本当に。水鏡に映る牡丹の君のお美しさは誰にも負けませんわ」

そこまでは流石に自分では言えないと竜胆は少し困ったように笑みを浮かべた。

「牡丹の君、今日は女装なさらないの?私初めてホスト部に来たのでお噂で聞いた牡丹の君を見たかったのに」

「女装はあくまで趣味だからね、気が向いた時にでもやるよ」

「見た事は無いですけれど……私はそのままの牡丹の君が素敵だと思いますわ」

「ありがとう、お嬢様」

「それにもうすぐ身体検査がありますでしょう?私、ちょっと楽しみですのよ」

竜胆はそれを聞いてぼんやりと水面に映る自分の顔を見た。そうか、もうそんな季節だと言う事をすっかり忘れていた。そもそも身体検査が楽しみとはなかなか正直な女の子らしい。

「お嬢様はそんなに俺の裸が見たいんだ?」

にっこり笑顔を浮かべた竜胆にそんな事を言われれば近くに居たお嬢様達まで卒倒ものだった。そんなお嬢様方に飲み物を取ってくるね、と小さく呟いてから竜胆は歩き出した。そしていつものように鏡夜のもとへ向かう。

「鏡夜。あの今日来た新規のお客様、ゲットだわ」

「よくやった」

「それで環は何故落ち込んでいるの?」

「娘のハルヒが自分と過ごす時間が光と馨より少ない事で悩んでいるそうだ」

なんともバカな悩みね。そんな当たり前の事だと言うのに。

「これはあくまで仮説だが…今まで俺がハルヒと年中一緒にいる様な気がしていたのは部活シーンばかり露出していた為の錯覚に過ぎず…もしや同じクラスの双子の方がよほど俺の知らないハルヒを…」

「ああ、その件ならちょうどここに証拠写真が」

追い討ちをかけてあげるな鏡夜。環が哀れ過ぎる。そんな思いは鏡夜に届かず鏡夜は一緒にいる時間にどれくらいの差があるのかを言い出す。それには環は耳を塞ぐ始末だ。


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