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「…ねぇ、鏡夜。おかしいよ、絶対に全部おかしい」

光とメイがハルヒの歌声を聞いている中竜胆は小さく呟いた。何が――そう訊こうとした時馨が鏡夜の隣に座り込んだ。

「鏡夜先輩。こないだ理事長の部下が行方不明って話聞いたじゃん?」

「ああ」

「他にも須王の周りで変な事起きてないか僕なりに調べてみたんだけどさ。アレマン医師ってわかる?」

「環の母親の主治医だろう?」

「確か2年前に引退しているのよね?」

「ああ。居場所も確認してある」

「いないよ。僕メールしてみたもん」

馨の行動力に鏡夜も竜胆も驚いた。

「ていうかウチの父さんの知り合いの知り合いの知り合いなんだってー」

それ遠すぎてわけがわからないわ。竜胆は小さく呟いた。

「で?どんな用件をでっちあげてメールを?」

「“近々フランスに行く予定があるから会ってお話聞かせてもらえませんかー僕 医者になりたいんですー”つって。10歳児くらいの純粋さを強烈にアピールして☆そしたら内緒だけど実はここにはいないのよーって奥さんからやさしー返信が」

「おまえ…」

「よくやったわ!随分と嘘がうまくなったじゃない!」

ぐっじょぶだ。竜胆は親指を立てて馨を褒めた。

「コドモのピュアさに大人は嘘つけないってやつだね。そんで更にこれは父さんの知り合いの親戚の知り合い経由で聞いたんだけど、知ってた?殿のお母さんの病気って実はまだ完全な治療法が確立してない難病で、普通は大人になるにつれて悪化してくんだって。じゃあ、何で鏡夜先輩と竜胆ねぇが会った殿のママは元気だったのかな――って」

完治とは分からないが、普通に生活できるレベルまで回復していた環の母親。

「…新薬が開発された、とかは?以前鏡夜に言ったじゃない。治療法を見つけた医者は誰かって」

「言われた通り調べたぞ。だが、そもそも新薬が見つかったという情報がない。それほどまでの難病の新薬が出来ればマスコミだって黙ってはいないだろう?」

確かにそれもそうだ。でも、確かに環の母親の容態は良いのだ。なら、何故薬が公になっていない?それとも奇跡で治った?環を渡してしまってから心を痛めた彼女が?

「…竜胆。先ほど言いかけたおかしいというのは何だ?」

「…ねぇ。全てタイミングを計った様に出来事が重なっていると思わない?」

「「…は?」」

「環が家の事業を勉強し始めた。本邸に入れられた。だが、親しい人間は誰も側にいない。ほぼ軟禁状態。第三音楽室が使えない。ホスト部が活動出来ない。放課後も私用は認められない。環確かに言ったわよね?“お祖母様に御理解頂いて”と。それは部の事よ。須王の会長は環が部の活動をする事に反対している。そして結果として今の環の頭の中は須王の事でいっぱいじゃない」




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