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「高坂の金への執着は竜胆の言った通り恐らく家庭環境によるものだが…じゃあ理事長の目的は何だと思う?高坂の行動を見抜けない程あの人は間抜けじゃないはずだ」

「うーんと…高坂さんがしてたのは殿の素行調査なわけだよね?それを理事長が知ってて泳がせたっていうなら…少なくても殿には害はないって事だよね。なんたってホスト部内2大親ばかの一人なわけだし…」

2大親ばかのもう一人は蘭花の事である。確かに環の父親もかなりの親ばかなのは分かる。

「…私はそうだと思えないのよね、最近」

「え?」

「環のお母様に会って思っちゃったのよ」

ね、鏡夜。それを聞いて鏡夜は小さく頷いた。

「環が母親と会えないのも、本邸に入れず肩身の狭い思いをしている事も全ては理事長のまいた種なのに、あの人が環の為に一体何をしてやった?グランテーヌ家が須王の援助なしでは存続できず、その為に会長の目がある限りヘタに動けない事情もわかる。だからといってただ会長の言いなりのままの理事長が本当に環を愛しているといえるのか――…?」

言えない。私はそう思う。愛している環の為を思うのなら時が経つのだけをひたすら待っているだけではいけない、そう思うはずなのだ。愛しているのであれば。

「それにまだ調査中だが…他にも気になる事実がある」

鏡夜は調書のファイルを取り出した。

「須王グループ内で譲氏直属の部下が一人3年前に退職しているんだが…譲氏の右腕とも…譲氏以上の才を持つとも言われた極めて有能な社員だ。“体調不良で田舎に帰った”と社内に報告したのは譲氏だが、しかし実際は田舎になど戻っていない。3年前から行方が知れないんだよ」

「…秘密裏に動いている可能性があると言う事よね?表向きは田舎へ帰り、実はまだどこかで何かをしている。譲氏が命じているという事で間違いないでしょうね」

だったら彼はどこで何をしているのだろうか。問題はそこにある。

「俺はずっと…環がハルヒへの気持ちを自覚したらそこでホスト部は終わりだと思っていた。光に遠慮して身を引く可能性もあったし、そうでなくとも今まで通りにいくはずがない。でもそれならそれで仕方ないと思ってた。俺もハニー先輩達と同じだ。今までがそもそも想定外だったんだからな」

鏡夜は小さな笑みを浮かべていた。竜胆もそれが移ったように微笑んだ。そうね、私も想定外だった。こんなに笑っている自分が居て、夢に向かっている自分がいるなんてあの頃の私じゃ絶対に考えつかなかった。そして好きな人も出来るとは思っていなかった。

「でも結局俺の予想は外れた。トラウマ疑惑にしたってそうだ。あいつのバカさはいつだって俺の想像を遥かに越えてるんだ。だから、俺も高校生の間だけとか、いつか終わりが来るとか、そう考えるのはやめにしたんだ」

「…鏡夜先輩…」

「…だからもし…もしそれを阻む物がいるとしたら俺は――…」

そう。私もそれに全力を尽くすわよ。貴方と同じ様に私がホスト部も皆も空間も全部大事なのだから。守ろう、私達の空間を。邪魔する人は誰だって許さない。鏡夜、私だってそうなのよ。後3年、後2年ってずっと考えてきた。しかもそれは解放される時を願っていた。でも気付けたわ。自分が自分の意思で桜蘭に居るという事に。だからこそ、自分の居場所を私も守るのよ。




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