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「男装して牡丹のフリをして通え、なんて無茶な条件を出す親ですが、私はそれを絶対に乗り越えます。それが私の夢なんです。ですから私事ではありますが、皆さん協力して下さい」

そうして男装する彼女は頭を下げた。なんてすごい女の子なんだと思った。自分の夢の為にこんなにも強い決意を持っている。それと同時に僕は恥ずかしさと憧れの感情を抱いた。それと同時に生まれてしまった感情も知った。

「ねぇ、鏡夜。こんな感じでどうかしら…?大丈夫だった?」

「掴みは良かったんじゃないか?」

でも、その感情は一瞬にしてはけ口を無くしてしまった。勘が良すぎるというのも困ったものだ。それでも良かった。彼女はこんな僕でも頼りにしてくれる事を知ったから。“埴之塚”だからじゃなくて、僕一人を信用に足る人物と判断してくれたに違いない。(須王君のお陰だけど)尚更僕はこれから、僕を、須王君のお陰じゃなくて、本当の僕を見て判断してくれる様に、そして認められる様に頑張ろう。僕に秘密を話して良かったって言ってもらえるような、僕でよかった、そう言ってもらえる様に僕は僕なりに頑張っていく。そして自分でもそう思えたその時この気持ちを伝えよう。だからまず一歩彼女に近寄ってみよう。少しづつ知って行きたい。だから、教えてくれるかな?

「ねぇ、君は甘い物好き?」

「…え?」

「僕はね甘い物や可愛い物が大好きなんだ〜☆」

でも、この趣味を分かってくれる人は見た事がない。そもそも断っていたから仕方ないんだけどね。

「だ、大好き、です!埴之塚先輩は、甘い物とか、可愛い物、そんなにお好きなんですか…?」

「うん!大好きだよぉ☆良かった〜☆僕ら仲間だねぇ☆」

彼女が目を輝かせた。少し胸の奥がきゅんとするような、僕はそういう小さな幸せを分けてもらえるだけで充分なんだよ。




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