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『それが私の夢なんです。ですから私事ではありますが、皆さん協力して下さい』

それは僕が第三音楽室の扉を初めて開いた時のお話。


埴之塚光邦の高校生日記@


僕は甘い物も可愛い物も大好き。だけれど、それは周りから引いた目で見られる事は知っていた。多分それは僕が埴之塚家の跡取りと言われているから。だから僕は無理をして甘い物や可愛い物を断って男らしさを心がけていた。周りの目をいつも気にしていた。そこで気付くんだ。どうせ僕はいつか埴之塚家を継ぐだけの存在だから。武道に秀でているから強くあればいい。夢なんていらない。だって僕はこのつまらない高校生活を送って、その延長で大学も選んで自分を抑えて生きるんだろうって思ってた。そんな時、僕の前に須王君が現れたんだ。“好きな物を好きと言える勇気”僕はその言葉に影響を受けて第三音楽室の扉を開いたんだ。

「ようこそ、埴之塚先輩、銛之塚先輩」

そこに居たのは僕を誘った須王君と鳳君、柊君の三人だった。残念ながらずっと知ってはいるけれど接点はなかった。

「初めまして。鳳鏡夜です」

「…柊……えっと、自己紹介は後でします」

柊君は少し困った様に小さな笑みを浮かべていた。それに僕は驚いたんだ。だって柊君はいつも一人で無愛想だったはずだから。もしかして君も須王君の言葉に影響を受けたのだろうか。そんな事を思っていた時再び第三音楽室の扉が開いた。そこに居たのは中等部の常陸院光君と馨君。柊君はそんな二人を見ると急に立ち上がって二人同時に飛びついたのだ。

「光っ!馨っ!」

「「ぼた――…竜胆ねぇ!?」」

二人の言葉に僕は首を傾げた。竜胆?どういう事だろう。しかも今の声や泣き顔はまるで女の子の様。あの柊君が?そしてその謎はすぐに解決する。一応自己紹介を、と柊君は立ち上がった。

「初めまして。柊竜胆です。皆さんが知っているのは柊牡丹。私の双子の兄です。何故私が今男装をしてここに居るのか、それは自分の夢を叶える為に親から出された条件をクリアする為です」

僕は自然と目を見開いていた。


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