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「モデルのお姉さん。初仕事はどうだったんだ?」

竜胆はその言葉を聞いて机に突っ伏した。そして肩を震わす。

「……あれは鬼よ…」

「はぁ?」

撮影場所に着いて一番に言われた事は親戚の目ではなく、ビジネスパートナーとして見るからねの言葉。竜胆もそれは当然の事だと頷いた。柚葉は竜胆の容姿とスタイルを見て採用しただけ。竜胆は自分以外の手から施される化粧に惚れ惚れしていた。そして柚葉の服の特徴と映り方にも色々とある事を知った。キラキラした世界、自分の好きなおしゃれに可愛い小物、夏の様に眩しい光に、竜胆と呼ぶ声。夏物を身に纏っていて少し寒いが幸せな空間だと思った。だが、それは一瞬で崩されたのだ。

「目を伏せてって言ってるでしょう!?その服はさもうちょっとシフォン感を表現してくれないかな!?素材を生かして!何その体勢!貴女は主役じゃないのよ!?主役は服や小物!何で服に着られてるのよ!?ただ笑えばいいってもんじゃなくて!すぐポーズ変えて!等等…」

思い出すだけで頭が痛くなった。そしてフラッシュの光がまだ目に残っている様な気がするし長時間ライトの下に居たせいか心なしか頭も痛い。

「…もうさ、確かに仕事だから抜かりなく行くのは分かる。だけれどこっちは素人。ずっと見学していただけのド素人に…なんてハイレベルな無理難題を押し付けてくるんだと思ってね…しかも言ってる事矛盾してない?みたいな。けれど、言い返せるはずもなく…久しぶりに辛くて泣きそうになったわ…」

竜胆は顔を上げ遠くを見ていた。いや、モデルさんってすごいわ。私なめていたわ…竜胆は頭を抱えた。

「…もう嫌になったのか?」

鏡夜の言葉に竜胆はすぐに頭を上げる。

「まさか!何言ってんのよ。むしろこれからでしょうが。負けっぱなしで逃げるのは私の性に合わない。来月出るパンフレットの一部なのだけれど、それが好評だったら専属モデルのオーデションに参加してみないかって言われたわ」

確かに過去に柚葉から何度もモデルの誘いがあった。だが、その時は牡丹だからと断っていたのだ。だが、もう断る理由は無い。


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